
SNSに投稿された、指で「ピース(Vサイン)」をした自撮り写真1枚だけで指紋が流出する可能性があるという主張が広まり、セキュリティ面での懸念が高まっている。AIやセキュリティの研究者のなかには、実際に危険性が存在しうると警告する声がある一方、「スパイ映画さながらの誇張された恐怖だ」として、可能性を低く見積もる声もある。
米ニューヨーク・ポストは3日、指紋流出をめぐる議論の発端が、中国の番組で公開されたあるセキュリティ実演映像だったと報じた。映像のなかで、中国の金融専門家であるリ・チャン氏は、人々が日常的に投稿しているピースサインの自撮り写真から、指紋情報が読み取られる恐れがあると説明している。画像を拡大し、AIを活用した解析技術を駆使すれば、写真に写った指の指紋模様が浮かび上がる可能性があるという。
リ氏は「パスワードは変更できるが、指紋のような生体情報は変更できない。一度流出すれば、長期的なリスクにつながる」と警告した。
一部の専門家は、こうした危険性が完全な作り話だとは考えていない。米マイクロソフトのサイバーセキュリティ・AI専門家であるブライアン・ロペス氏は「かつては科学捜査機関レベルの機材が必要だった作業も、いまでは特別な技能を持たない人でも実行できるようになっている。高解像度の写真は、AIを介して生体情報を再構成するために利用される可能性がある」と指摘している。
実際に、過去には具体的な事例も存在する。2014年、ハッカーのヤン・クリスラー氏は、当時の欧州連合(EU)高官の親指の写真を解析し、指紋の復元に成功したと発表した。この件は、画像から生体情報を抽出できる可能性を示す代表的なケースとして、現在もたびたび引き合いに出されている。
ただし、多くの専門家は、一般人を標的とした指紋情報を盗み取る犯罪が現実に発生する可能性は低いと反論する。米カーネギーメロン大学のビヤス・セカール教授は「こうした話は、スパイ映画や『ミッション:インポッシブル』のような世界に近い。実際に攻撃を行うには、非常に高度な環境と、特定の標的に対する集中的なアクセスが欠かせない」と述べた。
セカール教授によると、一般利用者の多くは標的になりにくく、犯罪者は富裕層や特定のセキュリティ施設にアクセスできる人物を狙う傾向にあるという。
それでも一定のリスクは否定できない。セカール教授は「理論的には、高解像度の画像があれば、可能性が全くないわけではない」とも指摘した。
専門家らは予防策として、いくつかのセキュリティ対策を呼びかけている。まず、指や指紋が鮮明に写った高解像度の写真をSNSに投稿しないことが必要だ。さらに、指紋認証のみに頼らず、多要素認証を組み合わせることでセキュリティを大幅に強化できる。
加えて、SNSの個人情報設定を見直して写真の公開範囲を制限することや、金融口座に不審な取引がないか定期的に確認することも重要だとしている。













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