少子化と高齢化が進む日本では、慢性的な人手不足が深刻な社会問題となっている。東京商工リサーチ(TSR)が10日に公表した「2026年5月の人手不足関連倒産動向」によると、5月に人手不足を理由に倒産した企業は37社で、前年同月比60.8%増加した。5月単月では2013年の調査開始以来最多を記録している。
こうした状況を受け、人材採用の基準にも変化が生じている。学歴やTOEICスコア、インターン経験といった定量的な評価よりも、職務適性を重視する動きが広がっているのだ。
TSRの報告書によると、資本金1,000万円未満の企業の倒産が25件で、前年同月比92.3%増加した。37社のうち36社が破産申請に至っており、物価高や人件費の上昇といった悪条件も重なり、事業再建が難しい状況に追い込まれている零細企業の実態が浮き彫りになった。TSRは大半が破産申請に至っている点を指摘し、経営の立て直しが困難な段階に差し掛かっている企業が増えていると分析している。

コンビニや飲食店をはじめ、多くの現場でアルバイトを外国人労働者が担う状況となっている。そうした中、8日には日経ビジネスが「護衛艦建造に外国人採用を許可…受注増加による人手不足、政府と業界協議」と題した記事を掲載した。受注が増加する一方で大手企業の採用強化により地方造船所の人材流出が続き、艦艇建造に携わる技術者が不足しているという内容だ。
現場での人手不足が深刻化する中、造船業界団体は防衛省の防衛装備庁に対し、外国人活用に向けた明確な基準の策定を協議するよう要請している。もともと造船各社は、軍事機密保全を理由に艦艇建造に携わる熟練工を日本人に限定してきた。しかし今や日本人だけでは建造が賄えない状況となっており、同盟国や友好国出身の外国人熟練工の活用案が検討されているという。軍事機密保全と人手不足という二つの課題が、業界に難しい判断を迫っている。
こうした状況を背景に、独自の方法で人材を確保しようとする企業が増えている。学歴やいわゆる「スペック重視」の採用から脱却し、その業務に本当に適した能力と経験を重視する動きだ。

毎日新聞は、京都府精華町の警備会社JUKOの取り組みを報じた。同社は今年から「筋肉採用」を導入し、ボディビル大会への出場を目指す人材の募集を始めた。2025年12月に社内の倉庫をジムに改修し、本格的なトレーニング機器を導入。機器は無制限で使用できるほか、プロテインの購入費や近隣の提携ジムの会費も補助する。さらに、専門的なトレーニングを希望する社員には近隣ジムへの通会費支援も用意している。
今年4月、このユニークな求人広告に惹かれた24歳の萩隆之介さんが入社した。高校時代はアメリカンフットボール部に所属し、3年時にはクリスマスボウル(高校日本一決定戦)に出場して優勝を経験。大学入学後はアメフトから離れ、ボディビルに取り組み始めた。卒業後は大手警備会社に入社したものの、昼夜逆転の勤務が続いてトレーニングを続けることができなくなった。アルバイトをしながら体を鍛えていたところ、祖父からこの求人を知らせる新聞記事が届き、すぐに応募して採用されたという。

現在は朝8時に現場に出勤し、午後5時まで施設警備に当たった後、午後6時から9時まで提携ジムでトレーニングに励む。6月14日に京都で開催されたオープン大会に向けて、栄養とカロリーを厳密に計算しながらトレーニングを続けていた。
JUKOは9月にも筋肉採用でさらに人材を募集する予定だ。同社の目標はさらに先を見据えており、「ボディビルダーチーム」を編成して警備依頼先に派遣することを目指している。創業者でもある奥野弘佳顧問は「全員が鍛え抜かれた警備チームなら、受注単価の向上も期待できる。業界の価値を高め、賃金など労働環境の改善につながる絶好の機会だ」と毎日新聞に語った。
こうした異色の採用は珍しいことではない。富山市に本社を置く送電線工事会社の平野電業は、高所作業を担う人材の確保を目的として「クライマー採用」を導入した。高所作業の危険なイメージから担い手が減り、人手不足が課題となっていたためだ。同社は「登ることを職業に」をスローガンに掲げ、クライマー向けの施設を整備。北信越最大規模とされる150坪のボルダリングジムを設置し、地域の選手育成と送電線工事業界へのクライマー誘致という二つの目標を掲げている。
人手不足はもはや採用規模の問題にとどまらず、産業全体の存続を左右する課題となっている。資格よりも「継続的に自己管理ができる人」「高所をいとわない人」のように、職務適性の高い人材を重視する方向へのシフトが、各業界で静かに進んでいる。













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