
【引用:X】アメリカのシコルスキー社が1960年代に開発したCH-54は、その独特な外観から「空飛ぶクレーン」と呼ばれる大型ヘリコプターだ。操縦席以外の胴体部分を極限までそぎ落とした骨格中心の構造が特徴で、機体下部に重量物を直接吊り下げて輸送する設計となっている。この方式により、従来のヘリでは不可能だった大規模物資輸送が可能となった。

【引用:X】最大の特徴は、10トンを超える重量物を空中で運搬できる点にある。軍需物資や建設資材、車両、大型機器といった幅広い貨物を運搬可能で、戦場や建設現場で「空中のフォークリフト」としての役割を担った。

【引用:X】性能面では、プラット・アンド・ホイットニーT73-P-700ターボシャフトエンジン2基を搭載し、最大離陸重量は約21トンに達する。最高速度は時速240キロ、巡航速度は190キロで、ローター直径は22メートル、機体長は27メートルという巨大なスペックを誇った。

【引用:X】本体を極限まで軽量化した設計は、下部へのモジュール式装備の搭載を可能にした。消火用水タンクや建設機材、兵員輸送モジュールなど任務に応じた装備を組み合わせることができ、任務ごとに柔軟な対応が可能となった。

【引用:X】過去を振り返ると、CH-54は1960年代から90年代にかけて米軍で重量物輸送や軍事建設支援に広く用いられ、ベトナム戦争では榴弾砲や車両、墜落機材の回収にも投入された。その後は民間へ移行し、森林火災消火や大型構造物輸送など特殊任務に活躍の場を移した。特にオーストラリアではエリクソン社の改造型S-64が「Elvis」などの愛称で導入され、数千リットル規模の水タンクを搭載して山火事対策に活用されている。

【引用:X】一方で、超大型エンジンと複雑な整備構造は運用コストを押し上げた。軍用としての効率は低下し退役に至ったが、民間の特殊任務分野においては依然として需要が存在し続けている。

【引用:X】CH-54の存在価値は消防活動にとどまらない。大型送電塔の設置や山岳地帯での資材輸送、沈没船の引き上げ、大型橋梁の設置など、地上のクレーンでは不可能な作業を空から実現する。今後も「空中重量物運搬プラットフォーム」として、災害対応や特殊建設で不可欠な役割を担うと見込まれる。
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