犬がパーキンソン病を「におい」で早期発見 英研究チームが成果発表
英国の研究チームが、パーキンソン病の発症前に犬が人間の体臭からその兆候を嗅ぎ分けることができるという興味深い研究結果を発表した。将来的には犬の優れた嗅覚を活用し、病気の早期診断につなげる可能性があると期待されている。
パーキンソン病は脳内の神経細胞が徐々に減少・退化し、身体の動きやバランスに障害を引き起こす慢性の神経疾患であり、進行性であることから早期の診断と治療が求められている。

米フォックス・ニュースが現地時間の21日に伝えたところによると、この研究は英国ブリストル大学の研究チームが行ったもので、約10カ月にわたって2頭の犬(ゴールデン・レトリバーと黒いラブラドール・レトリバー)に、パーキンソン病患者と健康な人の皮脂から採取したにおいを識別する訓練を行ったという。
訓練で使用した皮脂サンプルは合計205個にのぼり、その後の実験では、薬物治療を受ける前のパーキンソン病患者40人と健康な対照者60人からの皮脂サンプルを用い、犬がどの程度の精度で識別できるかを評価した。実験では「二重盲検法(ダブルブラインドテスト)」を採用し、研究者と犬のハンドラーのどちらもサンプルの正体を知らない状態で進められた。
犬の驚異的な嗅覚力、パーキンソン病の「におい」を正確に識別
その結果、1頭の犬は感度80%、特異度98%という高い識別能力を示した。これは、パーキンソン病患者のにおいを8割の確率で正確に嗅ぎ分け、健康な人をほぼ誤認することなく見分けたことを意味する。
もう1頭も感度70%、特異度90%と、高い精度を記録した。この結果は、犬が実際に患者と健康者の体臭を高い精度で区別できることを証明している。
研究チームは今回の実験を通じて、パーキンソン病患者の皮膚には「嗅覚的シグネチャー」と呼ばれる病気特有のにおいのパターンが存在することを確認した。
この「嗅覚的シグネチャー」は、人や動物が発する特有のにおいの組み合わせで、嗅覚に優れた犬はそれを識別し記憶することができるという。
こうした体臭の変化は、発症の何年も、時には数十年前から始まっている可能性があり、犬の嗅覚を活用すれば、これまでよりも格段に早い段階でパーキンソン病を発見できる可能性があると研究チームはみている。
研究を主導したニコラ・ルーニ博士は、「嗅覚に優れた動物、特に犬を活用する方法は、従来の複雑で負担のかかる診断法に比べてコストが低く、患者への負担も少ない新たな選択肢になる可能性がある」と述べた。
パーキンソン病の早期診断に新たな可能性
これまでパーキンソン病は、手足の震えや歩行障害、動作の遅れといった症状が明らかになってから診断されるのが一般的だった。そのため、病気がかなり進行してから治療を始めるケースが多く、早期介入が難しい疾患として知られてきた。

しかし近年は、パーキンソン病患者の皮膚に現れる皮脂成分の変化に着目した研究が進み、診断のあり方に変化が生まれつつある。今回の犬を用いた実験は、嗅覚に基づくバイオマーカーが実用化できることを示した初の大規模な検証例として評価されている。
研究チームは、犬を用いた診断手法について、「将来的には、人間の嗅覚を模倣するセンサーやデジタル解析装置へと技術的に置き換えられる可能性がある」との見解を示している。
さらに、「今後、皮脂に含まれる体臭の分子成分を科学的に特定することができれば、体への負担が少ない検査でパーキンソン病を早期に見つける診断システムの構築が現実になる」とし、「今回の研究成果が将来の診断技術の革新に向けた基盤となることを期待している」と付け加えた。
この研究結果は、国際的な専門誌『Journal of Parkinson’s Disease』の6月14日付の号に掲載されている。
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