
集中治療室(ICU)の患者に音楽を聴かせると、心拍数や血圧などの生理的指標が安定するという研究結果が発表された。
音楽は人類の歴史とともに始まったと言っても過言ではなく、人間の生活と深く結びついている。近年の研究により、音楽にはストレス軽減や心理的安定、生理機能の改善、脳の活性化、うつ症状の緩和など、多くの効果があることが明らかになっている。米国集中治療医学会(SCCM)においても、音楽療法は重症患者の標準治療ガイドラインの一つとして推奨されている。
この中、メキシコのグアナフアト大学医学部の研究チームは、心臓疾患で集中治療室に入っている患者に音楽療法を実施した結果、心拍数、血圧、さらに患者と人工呼吸器の非同期性が大幅に改善されたことを発表した。この研究成果は、メキシコシティで開催された「米国心臓病学会(ACC)南米2025」会議で公表されたものである。
音楽療法とは、音楽の健康効果に着目し、ストレス軽減や生活の質向上を目的として音楽を活用する治療法である。研究チームは2024年7月から9月にかけて、18歳以上で冠状動脈疾患によりICUに入院している患者24名を2群に分け、音楽療法が身体に与える影響を観察した。参加者はいずれも意識は明瞭で判断能力があり、聴覚障害は認められなかった。
研究では、一方の群に対して5日間毎日45分、15デシベルの音楽を聴かせ、もう一方の群には音楽なしで治療を行った。その結果、音楽療法群では対照群と比較して、心拍数、収縮期・拡張期血圧、さらに患者と人工呼吸器の非同期性が有意に低下することが確認された。
研究を主導したイラニ・パオラ・サントヨ・ペレス博士は、「今回の結果は、音楽療法が心臓ICUのような高ストレス環境下で、心拍数や血圧などの生理的指標の安定化に大きく寄与する可能性を示している」と述べた。さらに博士は、「音楽療法を併用することで身体的な苦痛を軽減し、快適さを向上させ、患者の全体的なウェルビーイングを促進できる。今後の積極的な導入が望まれる」と付け加えた。
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