
青少年期の喫煙は、本人だけでなく将来の子供の健康にも悪影響を及ぼす可能性があることが明らかになった。
ノルウェーのベルゲン大学に所属するフアン・パブロ・ロペス・セルバンテス博士らの研究チームは、オランダ・アムステルダムで開催されたヨーロッパ呼吸器学会(ERS)の学術大会で、父親が15歳未満で喫煙を開始した場合、その子供は非喫煙の父親を持つ子供と比較して、生物学的老化が約1年早まるという結果を発表した。
研究チームは、今年9月29日に約890人を対象に実施した父親の青少年期における喫煙と子供の老化との関連性分析において、この結果を得たと明らかにした。なお、ERSは今年9月27日から10月1日まで開催される。
研究チームは、15歳未満で喫煙を開始した父親の子供に、実際の年齢よりも早い生物学的老化の兆候が見られたと指摘し、喫煙者本人のみならず、将来の世代を守るためにも青少年の喫煙予防対策を強化すべきだと強調した。
また、北欧・スペイン・オーストラリアで実施された呼吸器健康(RHINESSA)研究に参加した7~50歳の892人(平均年齢28歳)を対象に、本人および両親の喫煙状況や喫煙開始年齢などを調査し、血液サンプルを用いてエピジェネティックな変化を分析した。
老化の測定には、「エピジェネティッククロック」と呼ばれる生物学的老化測定法が用いられた。
加齢に伴い、細胞内のDNAに追加の分子が蓄積される。これらはDNA自体を変えるものではないが、遺伝子の働きに影響を及ぼす。このようなエピジェネティックな変化は、老化の兆候であるだけでなく、がんや認知症などの高齢者性疾患とも関連がある。
分析の結果、父親が15歳未満で喫煙を開始した場合、その子供は平均して実際の年齢より約9ヶ月から1年(12ヶ月)早く生物学的に老化していることが判明した。
さらに、父親が思春期に喫煙を開始し、かつ参加者本人も喫煙者であった場合、生物学的年齢と実際の年齢の差は14~15ヶ月に拡大した。
一方、父親が成人後に喫煙を開始した場合、生物学的年齢はわずかに上昇したが、母親の妊娠前の喫煙と子供の老化との間には明確な関連性は観察されなかった。
研究チームは、本研究が思春期の喫煙と老化加速の関連性を完全に説明するものではないものの、父親が思春期に喫煙を開始すると精子細胞のエピジェネティックな性質が変化し、その変化が次世代に伝わる可能性があると説明した。
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