
米国でユダヤ人を標的とした反ユダヤ的嫌悪事件(暴行、嫌がらせ、器物損壊など)が昨年時点で10年前の約10倍に増加したことが判明した。この数値は1979年の統計開始以来最多で、昨年米国の大学キャンパスを席巻した親パレスチナデモの影響が大きいとみられる。
22日(現地時間)、米メディアのアクシオス(Axios)によると、米国最大のユダヤ人団体「名誉毀損防止同盟」(ADL)が発表した調査報告書で、2024年の米国内の反ユダヤ事件が9,354件に達したことが明らかになったという。この数字は前年比5%増で、10年前と比べ893%の増加となった。調査では、報告された事件の58%がイスラエル関連だった。また、6,500件以上で反ユダヤ主義的な侮辱や比喩表現が使用され、2,600件以上で落書きや放火などの器物損壊と財産被害が発生したという。
ADLは2024年、大学キャンパスで1,694件の反ユダヤ主義事件が発生したとも報告。これは前年比84%増で、昨年コロンビア大学などを中心に広がった親パレスチナデモの影響とみられる。ADL過激主義センターの責任者は「反ユダヤ事件の増加はガザ戦争後、一時的なものを超えて継続している」とし、「反ユダヤ主義は米国在住ユダヤ人コミュニティーの現実となった」と指摘した。一方で、一部のユダヤ人指導者は、大学でのデモを口実に留学生のビザを取り消し追放するドナルド・トランプ大統領の政策によって、むしろユダヤ人がより危険にさらされていると批判している。
なお、ADLはイスラエル批判自体を反ユダヤ主義事件とは見なさないとしている。ただし、イスラエルの破壊を主張したり、イスラエルに関する議論で反ユダヤ主義的表現を用いた場合は、反ユダヤ主義事件と見なすとしている。