
エヌビディアCEOのジェンソン・ファン氏は、AI半導体として使用されるGPUの輸出制限が、対象国の軍事力を制限することにはならないと主張した。むしろ、輸出を許可しAIチップ産業でのシェアを高めることで主導権を維持できると説明した。
ファン氏は6日(現地時間)、米ロサンゼルスで開催されたミルケン研究所グローバル・カンファレンスでこう述べた。「一方では、この技術を我が国の『最も親密な同盟国』にのみ提供すべきだという意見もある。軍事目的に使用される可能性のある国々には技術を渡さないようにすべきだという主張だ」と語り、米国の対中AI半導体輸出規制を間接的に言及した。
しかし、ファン氏は「ここに重要な誤りがある」と指摘。「どの政府も、特に我々が『敵国』と見なす政府でさえ、自国内のコンピューティング資源の不足で軍事開発ができないわけではない」と述べた。既存のコンピューティング資源を活用できる上、実際にエヌビディアのチップは既に世界のほぼ全ての国に数百万個が流通しているためだ。
ファン氏は「むしろこの技術を輸出する理由は、我々が世界のAIを主導するためだ」と強調した。米国のAI半導体関連基準を世界標準とし、AIエコシステムを米国の技術基盤の上に構築すべきだと主張した。
「エヌビディアが世界をリードしているのは事実だが、我々がある市場を放棄すれば、その空白を他社が埋める」とし、「例えば、中国の華為(ファーウェイ)は非常に強力な企業で、確実にその隙間を埋めるだろう」と警告した。
ファン氏は、最終的にAI半導体の市場シェア拡大で競合国に打ち勝つべきだと強調した。「米国が中国へのチップ輸出を禁止して以来、中国市場は数年で500億ドル(約7兆1,600億円)規模に成長した」とし、「そのような市場を失うことは、単なる収益損失だけでなく、税収、雇用創出、技術発展の機会全てを放棄することを意味する」と述べた。
一方、ファン氏はこの日、AI産業について「歴史上初めて、ほぼ全ての産業に影響を与える技術が登場した」と評価した。金融、ヘルスケア、製造、物流、流通、エンターテインメントなど、業種を問わず影響を及ぼしていると説明。インターネットが情報インフラだったのに対し、AIは知能インフラだと主張した。
さらに、AIによって仕事を奪われるのではなく、AIを活用できる人に仕事を奪われることになると警告した。