
「ドナルド・トランプ大統領の金利引き下げ要求が米連邦準備制度理事会(FRB)の決定と業務にどのような影響を与えるのか」(フォックスビジネスの記者、エドワード・ローレンス氏)
「全く影響を与えない。我々は常に同じことを行う」(FRBのジェローム・パウエル議長)
7日(現地時間)、ワシントンDC市内のCストリートにあるFRBビル1階の記者会見場。トランプ大統領が最近まで公然と「パウエル議長の解任」に言及し、その後も基準金利引き下げを露骨に要求したため、記者たちの関心は「パウエル議長の発言」に集中した。しかし、パウエル議長は「大統領の意向」に従わなかった。関税が米国経済にわずかでもプラスになるという「お世辞」すら行わなかった。むしろ、関税により「米国経済が弱体化し、インフレが起こる可能性がある」と直言した。記者会見冒頭の発言では、「物価安定なしには、全ての米国民に恩恵をもたらす長期的で強力な労働市場の状況を達成できない」と述べ、性急な金利引き下げ期待に警戒感を示した。
パウエル議長は先月16日、シカゴ経済クラブでの講演でもほぼ同様の発言をした。先月2日の相互関税発表とその後の相互関税猶予、対中関税強化により市場が極度に混乱していた時期だ。「関税が米国経済にマイナスになる」というパウエル議長の指摘にトランプ大統領は激怒した。翌朝からSNSでパウエル議長を解任できると脅し、「彼は私が出て行けと言えばすぐにアウトだ」とまで言った。それにもかかわらず、パウエル議長はこの日の記者会見で信念を曲げなかった。
Yahoo!ファイナンスの記者、ジェニファー・ショーンバーガー 氏がパウエル議長がトランプ大統領の就任後一度も大統領と会っていない事実を指摘し、「なぜまだ大統領との会談を求めていないのか」と尋ねると、パウエル議長は「どの大統領とも先に会おうとしたことはなく、今後もそうするつもりはない」と答えた。これを受けてCNN記者がさらに踏み込んだ質問をした。来年5月15日までの議長任期が終了した後もFRB理事として残りの任期(2028年1月31日まで)を全うするのかとパウエル議長に尋ねた。
パウエル議長の答えは明快だった。「私と同僚たちは皆、困難な状況を乗り越え、正しい決定を下すことに集中している。我々が奉仕する人々にとって最良の決定を下そうとしており、これが我々が昼夜考えているすべてだ」
FRB議長と理事の任期は大統領の思い通りにはならず、金利も大統領の意向ではなく経済の実態に即して決定されるべきであり、ただそれだけを考えているということだ。米中央銀行の独立性が容易に得られたものではないことを示した会見だった。