米中対立の狭間で苦しむ海外帰国組
「中国家電の女王」格力電器の董明珠会長
「スパイの危険…海外帰国者は絶対採用しない」
STEM人材確保に冷や水浴びせる発言

中国家電メーカー「グリー電器(格力電器)」のドン・ミンジュ会長が「海外留学経験者(海帰)はスパイの可能性があるため採用しない」と発言し、強い批判を浴びている。先月開催された株主総会でドン会長は「中国国内の大学出身者だけを育成する」と述べ、この発言を収めた動画は公開からわずか1日で閲覧数1億回を超えた。
グリー電器は約1万人の研究開発人員をすべて中国国内の大学出身者から採用してきた。一方、競合他社のハイアール(海爾)やメイディア(美的)は10%以上が海外留学経験者である。ドン会長の発言は国内人材の重視を超えて、海外人材の排除を明確に打ち出したものと受け止められている。
中国メディア「新京報」は「帰国者全体を潜在的スパイとみなすのは論理的誤りだ」と鋭く批判し、「環球時報」の元編集長であるフー・シージン氏も「国家の政策方針に反する」と批判を加えた。一方で、「海外留学時代は終わった」とする一部の賛同意見もあり、ネット上では留学生をより厳しく審査すべきとの声も上がっている。
中国政府は「千人計画」や「帰国留学生サービス改善策」などを通じてグローバル人材の誘致を奨励してきた。実際に、海外の科学者たちの帰国事例も増えており、政府機関自らが留学生向けの採用公告を出すこともあった。
しかし、STEM分野の一部の学者を除く一般の留学生にとっては、排他的な雰囲気の中で愛国心を証明しなければならない状況に置かれている。一部の省では海外学位保有者の公務員試験の受験を制限しており、政治的信念の欠如を理由に主要ポストから排除されるケースも少なくない。
「海帰」への二重基準は習近平政権第3期に入ってから一層明確になっている。最高指導部はすべて国内大学出身者で占められており、高官の留学経験者比率も急減した。それにもかかわらず、昨年中国に帰国した海帰は129万人と過去最多を記録した。彼らは就職戦線で「潜在的スパイ」という疑いと闘う現実に直面している。
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