
米中関係の悪化に伴い、中国で事業を展開する米国の代表的なビッグテック企業が厳しい立場に置かれている。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)は17日、ホワイトハウスがここ数カ月の間に、アップルが中国のアリババと締結したAIに関する契約について精査していると報じた。アップルは今年2月、中国市場向けのiPhoneにアリババ製のAIを搭載するための契約を結んだとされている。しかし、米当局は、中国国内で1億人以上が使用するiPhoneに中国製AIを搭載することで、膨大なユーザーデータが収集され、中国のAI技術がさらに強化される可能性があると懸念している。米下院は「アリババは中国共産党の軍民融合戦略を象徴する企業であり、アップルがなぜアリババとのAI協力を選んだのか、その経緯を明確に説明しないことは極めて懸念されることだ」と指摘している。
アップルが中国市場でiPhoneに中国製AIを搭載せざるを得ない背景には、海外製AIに対する厳格な検閲を課す中国の規制がある。中国では、政府が世論を統制できるAIモデルのみが配布を許可されており、生成されたデータは中国内に保存しなければならないと規定されている。このため、アップルが昨年から主要機能としてアピールしている「アップル・インテリジェンス(Apple Intelligence)」は、中国国内では適用できない状況だ。NYTは、「最も重要な市場の一つである中国において、アリババとのAI契約を結ばなければ、アップルはAIを搭載したファーウェイやシャオミなどの中国製スマートフォンに後れを取る可能性がある」と指摘した。実際、iPhoneの中国市場におけるシェアは、2023年の17.3%から昨年は15%台にまで低下している。
米国による半導体の対中輸出規制により、中国へのAI半導体の販売ができなくなったNVIDIA(エヌビディア)は、中国・上海に研究開発(R&D)センターを開設するためのロビー活動を展開している。フィナンシャル・タイムズ(FT)の15日の報道によると、NVIDIAのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は今年4月に中国を訪問し、上海市長とR&Dセンターの設置計画について協議したという。このR&Dセンターは、中国の顧客企業の要望を本社に伝える役割を担い、それに基づいて米国の輸出規制に抵触しない特化型半導体の開発を支援するという目的がある。
しかし、この計画が最終的に許可されるかは不透明である。NVIDIAの中核技術が中国に流出し、中国のAI開発を後押しする可能性があるとの懸念があるためだ。こうした懸念に対し、NVIDIAは自社の半導体設計図を中国に送らず、中国国内で再設計や製造を行わないと明言している。ファンCEOは最近のイベントで「もし我々が中国市場から完全に撤退すれば、他の誰かがその空白を埋めることになるだろう」と述べ、「たとえばファーウェイは非常に強力な企業であり、その空席に参入してくることは間違いない」と語った。