
中国人民元が米ドル中心のグローバル金融秩序に亀裂を生じさせ、存在感を増している。「プラザ合意2.0」の可能性まで取り沙汰されるほど通貨秩序の再編の動きが顕在化する中、香港を中心にドルを迂回した決済網の拡大が本格化している。
26日付のサウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)によると、香港銀行協会のメアリー・フエン・ワイイー会長は最近のカタール訪問後、「現地企業が人民元の活用に強い関心を示した」と明かしたという。カタール商工会議所所属の企業らは「中国との合弁事業や中国からの技術・人材導入時に、人民元による資金調達や決済がどう役立つか」を問い合わせたとされている。実際、決済、為替ヘッジ、スワップなど多様な金融インフラを備えた香港は、アジアと中東をつなぐ人民元取引のハブとして急速に台頭している。
中国人民銀行によると、4月の人民元建て越境決済額は前月比12%増の1兆5,100億元(約29兆9,353億円)と過去最高を記録した。貿易金融市場でも3月の人民元の決済シェアが7.4%となり、ユーロ(6.2%)を上回った。米ドルは依然として82.1%という圧倒的なシェアを維持しているが、人民元の上昇傾向が徐々に鮮明になっているとの見方が出ている。
この変化は、ドナルド・トランプ米大統領の関税政策と米国の信用格付けの引き下げが引き起こしたドルへの信頼低下によるものと解釈されている。香港科技大学のエドウィン・L.-C.・ライ教授は「トランプ大統領の政策が米ドルの基軸通貨としての地位に長期的な悪影響を及ぼしている」と指摘した。
中国は、日本が1985年のプラザ合意以降、円の国際化に失敗した事例を教訓に、通貨戦争に備えてきた。円が主に政府開発援助を通じて進められ限界があった点を踏まえ、開発援助的な「一帯一路」と民間での使用拡大を狙った「デジタルシルクロード」をパッケージで推進している。
実際、中国は2015年に独自開発した「人民元国際決済システム(CIPS)」を通じて独自の決済網を拡大している。日本経済新聞によると、CIPSに参加する銀行は過去3年間で約30%増加し、約1,667行に達しているという。最近ではカザフスタン国立銀行が中国のWeChatpayの決済システムを導入するなど、中国のデジタル決済サービスを利用できる国も40か国を超えた。