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2025年06月04日水曜日
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【EV航続距離革命なるか】MITが開発した”レンガサイズ”燃料電池がすごい!リチウムイオン電池の3倍エネルギーで「短距離飛行が現実に」

MIT、液体ナトリウム燃料電池を開発

「レンガサイズで短距離飛行が可能に」

引用:グレッチェン・エルトル
引用:グレッチェン・エルトル

電気自動車に使用されているリチウムイオン電池よりも3倍以上の電力エネルギーを蓄えることができる燃料電池が開発された。電気自動車の航続距離の大幅な向上はもちろん、二酸化炭素を排出しない電動航空機の商業化を早める可能性があるとして注目されている。

米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、エネルギー密度が1kgあたり約1,700Wh(ワット時)に達する燃料電池を開発した。液体ナトリウムを利用して電力を生成する仕組みで、研究成果は先月28日(現地時間)、エネルギー科学分野の国際学術誌『ジュール(Joule)』に掲載された。

エネルギー密度とは、単位重量または単位体積あたりにどれだけのエネルギーを蓄えられるかを示す指標で、数値が高いほど効率的にエネルギーを保存できる。現在のリチウムイオン電池は、1kgあたり約300Whのエネルギーを蓄えるとされている。

研究チームは、リチウムに比べて安価かつ入手が容易な液体ナトリウムを用いた燃料電池を開発した。燃料電池は、電気エネルギーを生成する燃料である液体ナトリウムを使い切った後に補充する形式で、充電式の二次電池とは異なる概念だ。液体ナトリウムは、金属ナトリウムを加熱して液状にした物質である。

研究チームは実験室で、H字型構造の液体ナトリウム燃料電池を試作した。この構造は、垂直に配置された2本のガラス管を電解質チューブで接続したHの形をしている。片方のガラス管には液体ナトリウムを、もう片方には空気を通す仕組みである。チューブには、ナトリウムイオンだけを通すセラミック製の膜「固体セラミック電解質」と、酸素が通過しナトリウムイオンと反応する「多孔質空気電極」が設けられている。燃料電池に多量の空気を流すと、酸素が液体ナトリウムを消費しながら電気化学反応を引き起こし、電力を生成する。

開発された燃料電池のエネルギー密度を測定したところ、1kgあたり約1,700Whの電力を蓄えることができた。これを実際の製品向けのシステムとして構成した場合でも、1,000Wh以上のエネルギーを貯蔵できると分析されている。現在主流のリチウムイオン電池に比べて3倍以上のエネルギーを蓄える計算となる。

これまでMIT研究チームのように、ナトリウムと空気を用いた燃料電池の研究は進められてきたが、その多くは固体ナトリウムに限定されていた。固体ナトリウムを使った電池では、反応によって生じる副産物の大半が固体であるため、それらが電極に付着して反応を妨げ、電池の寿命が短くなるという課題があった。

MITの研究チームは、液体ナトリウムと大気中の湿度を活用することで、これまでの課題を克服した。高湿度の環境下では、反応による副産物の大半が液体として生成されるため、固体に比べて除去が容易であり、これにより燃料電池のエネルギー変換効率が向上した。研究に参加したMIT博士課程のサヒール・ガンティアグラワル氏は、「ナトリウム-空気電池の開発において、湿度の調整を試みたのは今回が初めての事例だ」と評価している。

研究チームはこの成果をもとに、MIT発のスタートアップ企業「プロペル・エアロ(Propel Aero)」を通じて、レンガサイズの燃料電池の製造を計画している。この燃料電池は1kgあたり約1,000Whのエネルギーを蓄えることができ、長距離の大陸横断や大西洋横断には至らないものの、国内移動や近隣地域でのフライトには十分な電力量を提供できると見込まれている。また、この燃料電池は、リチウムイオン電池と比較して二酸化炭素を排出せず、火災のリスクも低いため、安全性の面でも優れている。MIT材料科学・工学科のイェット・ミン・チアン教授は、「電動航空機の大規模な商業化を実現する画期的な技術だ」とし、「船舶や鉄道輸送にも応用できる」と説明した。

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