ロシア空軍基地への奇襲攻撃からわずか2日後


1年半かけて準備した「パブティナ(蜘蛛の巣)」作戦でロシアの空軍基地を壊滅させたウクライナ保安庁(SBU)が、今度は「プーチンの威信」と呼ばれるクリミア大橋を攻撃した。
3日(現地時間)、SBUはロシア本土とクリミア半島を結ぶ橋に機雷による攻撃を実行したと発表した。
SBUは、この日クリミア大橋の水中橋脚の1本にTNT1,100kg級の爆発物を仕掛けて爆破する特殊作戦は、数か月にわたる準備の末、この日午前4時44分に最初の爆発物の起爆に成功したと明らかにした。
橋脚の損傷は深刻だが、民間人の犠牲者を出すことなく遂行されたと主張した。この作戦はSBUのヴァシーリー・マリューク長官が直接指揮したとされる。
これを受けてロシア当局は、クリミア大橋の一時的な車両通行止めを発表した。
AFP通信は、爆発による被害の規模はいまだ不明だと伝えている。
また、ロシア連邦保安庁(FSB)はクリミア半島でウクライナの工作員を逮捕し、この工作員がテロ攻撃を準備していたことを自白したと発表した。
クリミア大橋は「プーチンの威信」


クリミア半島とロシア本土を直接結ぶ唯一の通路であるクリミア大橋は、欧州最長の19kmにも及び、建設には約2,279億ルーブル(約4,182億4,344万円)が投じられた。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2018年5月のクリミア大橋開通式で、カマーズ製トラックを自ら運転して橋を渡った。クリミア大橋が「プーチンの威信」と呼ばれる所以である。
2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻以来、クリミア橋はロシア軍の補給で重要な役割を担ってきた。
クリミア半島を含む領土の完全回復を終戦条件に掲げるウクライナは、開戦以来クリミア大橋を執拗に攻撃してきた。
プーチン大統領の70歳の誕生日翌日にあたる2022年10月8日には、爆発物を積んだトラックが爆発し、4人が死亡、クリミア大橋の橋梁2本分の区間が崩落した。
一時通行止めとなっていたクリミア大橋は開戦1周年を前にした2023年2月に完全復旧したが、2023年7月にはウクライナの空爆で再び危機に瀕した。今回はクリミア大橋を狙ったウクライナの3度目の大規模攻撃となる。
ウクライナは、クリミア大橋がロシア軍の補給路として機能している以上、正当な攻撃対象だとの立場を取っている。
ロシア・ウクライナのイスタンブール協議は「平行線」

この日の作戦は1日、ウクライナがロシア本土の空軍基地4か所に対する奇襲ドローン攻撃作戦を「成功裏」に遂行したと発表してからわずか2日後のことだ。
ウクライナは、この作戦でロシアが保有する戦略巡航ミサイル発射手段の34%、総額70億ドル(約1兆75億4,850万円)相当を破壊したと主張している。この作戦もマリューク長官が総指揮を執ったとされる。
一方、ロシアとウクライナは前日、トルコのイスタンブールで2回目の協議を行ったが、停戦条件などを巡って溝を埋められず、約1時間で終了した。両者は捕虜および戦死者の交換についてのみ和解した。
ロシアも協議終了直後に攻勢に出た。
この日、ロシア軍が北東部スーミ市の中心部にロケット弾を数発発射し、少なくとも3人が死亡、20人が負傷したとAP通信がウクライナ側の発表を伝えた。
ウクライナ側は、ロシアが前夜から当日午前にかけて、スーミの他にオデーサ、ハルキウなどウクライナ各地にドローン117機を発射したと主張している。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は声明で、ロシアが民間人を意図的に攻撃したと非難し、米国と欧州に対してロシアへの圧力強化を重ねて要請した。