
外国人観光客を対象に導入されてきた免税制度について、日本政府と与党・自民党が廃止を検討している。背景には、制度を悪用し免税で仕入れた商品を国内で転売し利益を得るといった不正が相次いでおり、これによって本来得られるべき税収が失われているとの問題意識がある。
4日付の香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)によれば、自民党の中西健治議員と田中和徳議員が、免税制度の撤廃を求める法案を党の税制調査会に提出する方針だ。
中西氏は「日本は安さだけを売りにする国ではあってはならない」と語り、「単に価格の安さを求める訪日客ではなく、日本の真の価値を理解して訪れてほしい」と述べた。田中氏も「免税制度の悪用は消費税制度の信頼と公平性を損なう。現状を放置することはできない」と強調している。
現行制度では、外国人観光客が1回の買い物で5,000円以上の商品を購入した場合、消費税10%が免除される。しかし、この制度を利用し、商品を日本国内で転売して利益を得るケースが問題視されている。
SCMPが引用した日本政府のデータによると、2022年3月から2024年4月までの間に、訪日観光客690人が1億円超の免税買い物を行ったが、購入品は出国時に義務付けられている税関検査を受けていなかった。免税措置は国外持ち出しを前提とするにもかかわらず、実際には国内で転売されていた可能性が高い。政府の試算では、こうした不正により約2,400億円もの税収が失われたとされている。
自民党は、免税制度が地域経済の活性化や雇用創出に十分寄与していないとの認識も示しており、制度の意義そのものに疑問を呈している。政府はすでに制度の見直しを進めており、今年初めからは「購入時に消費税込みの金額を支払い、出国時に税関で通関手続きを行った上で消費税を還付する」という仕組みへの移行を開始している。
一方、自民党は日本国民向けの消費税減税についても実施を見送る方向で固めた。アメリカの関税政策や物価高騰への対応として検討されてきたが、消費税は年金や医療といった社会保障制度の財源として重要であり、減税を実施すれば最大で10兆円規模の税収減が見込まれるためだ。政府は「消費税率の引き下げは社会保障の基盤を揺るがしかねない。不足分を国債で補えば将来世代の負担になる」として、慎重な姿勢を崩していない。