
米カリフォルニア州ロサンゼルスで、移民取り締まりに反発する市民による抗議デモが激化している。
8日(現地時間)、ロサンゼルス中心部では、治安部隊が催涙ガスやゴム弾を使用してデモ隊の強制排除に乗り出した。
米紙ワシントン・ポスト(WP)は9日、ロサンゼルスで数千人規模の参加者が州兵派遣への抗議の意志を示しながら市内を行進し、高速道路の封鎖や車両に放火するなど、緊張が高まっていると報じた。目撃者の証言によると、自動運転車ウェイモなど少なくとも4台の車両が炎上し、黒煙が立ち昇る中、電気自動車の燃焼に伴う断続的な爆発音も聞こえたという。
ロサンゼルス警察、市中心部全域を「違法集会区域」に指定
カリフォルニア州ロサンゼルス各地でのデモが3日目を迎える中、ロサンゼルス市警察(LAPD)は市内の複数のブロックを閉鎖し、中心部全地域を「違法集会区域」に指定した。ロサンゼルス市警察はこの日、ソーシャルメディアを通じて現場からの即時退去を呼びかけた。
ロサンゼルス市警察はゴム弾や催涙ガス、閃光手榴弾など非致死性兵器を使用し、デモ隊の解散を図っている。これに対しデモ隊は、公園のベンチを使ってバリケードを築き、警官や車両に向けて石や火炎瓶を投げるなど、激しい抵抗を見せた。
この日、マリアッチ・プラザから市内の移民収容施設がある連邦政府庁舎まで、約1.6キロメートルにわたるデモ行進も行われた。
さらに、オートバイに乗った2人が警察の封鎖線を突破しようとして警官に衝突し、その場で身柄を拘束された。
州兵300人をデモ現場に投入、海兵隊の派遣も準備中
米CNNによると、カリフォルニア州兵約300人以上がデモ現場に投入されており、連邦政府も海兵隊500人の派遣を準備しているという。
今回のデモは、6日にアメリカ合衆国移民・税関執行局(ICE)がロサンゼルスの衣料品卸売店やホームセンターなどで突如実施した移民摘発をきっかけに発生した。初日だけで100人以上が拘束されたという。
これを受け、市民の間ではトランプ政権による強硬な移民政策に対する反発が広がり、ロサンゼルス中心部をはじめ各地で抗議活動が続いている。トランプ大統領は今回のデモを「暴動」と位置付け、連邦政府による鎮圧を宣言して州兵を投入し、さらに事態を悪化している。
デモが激化する中、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、自身のSNSを通じて「トランプの望む展開を与えるべきではない」とし、「冷静を保て。平和を維持せよ」とデモ参加者に呼びかけた。
ロサンゼルス市のカレン・バス市長も「市民の平和的な抗議は憲法で保障された権利」としつつも、「暴力や破壊行為には断固として対処する」と警告した。
カリフォルニア州知事「冷静に行動を」 連邦政府に抗議の意向も
一方、ニューサム知事は、州の同意を得ずに連邦政府が州兵を派遣したことは「憲法違反」であるとして、法的措置を取る方針を示している。
MSNBCのインタビューでニューサム知事は「トランプは火に油を注いでいる。今回の州兵派遣は違法であり、非道徳的で違憲だ」と強く批判した。
また、国防総省との事前調整がなかったことを問題視しており、ピート・ヘグセス国防長官宛に州法務長官名義で抗議書簡を送付し、州兵の撤退を要求したことも明らかにした。
また、ホワイトハウスのトム・ホーマン国境政策顧問が「違法移民摘発の妨害は逮捕対象になる」と発言したことについて、ニューサム知事は「私を逮捕すればいい。そのような脅しなど気にしない。ただ、地域社会の平和を大切にしたい」と述べた。
中国メディア「これはアメリカの『内戦』の予行演習」
こうした状況について、中国国営メディアの新華社通信は9日、自社のSNSアカウントに「大都市がまるで中東の戦場のようだ」と投稿した。トランプ政権とカリフォルニア州政府の対立構図を「中央権力対地方政府」と位置づけ、「これはアメリカの大きな『内戦』の予行演習だ」と指摘した。
さらに、今後3年半にわたり「米国社会の分断はさらに深刻化するだろう」と、米国内の対立激化を皮肉交じりに評した。