
イスラエルの警告を受け、首都テヘランに住む住民の避難が続く中、米国の無条件降伏要求に直面するイランは、5日間にわたりイスラエルに向け大量の戦略ミサイルを発射するなど抵抗を続けている。
米国の介入可能性が高まる中、イランは18日(現地時間)、イスラエルに向け数十発の戦略ミサイルを発射した。イランの最高指導者であるアリー・ハーメネイー氏は抵抗の姿勢を強めているが、状況を誤認しているとの指摘も出ている。
ハーメネイー氏はSNSのX(旧Twitter)で、「我々はシオニストのテロ政権に強く対応せねばならない」とし、「シオニストたちに慈悲を示すことはない」と述べた。イラン革命防衛隊は同日、イスラエルに向け超音速ミサイルを発射し、制空権を完全に掌握したと主張した。
イスラエル国防軍(IDF)もテヘランの軍事施設を標的にしているとし、テヘラン18区の住民に避難を呼びかけた直後に空襲を開始した。空襲によりイラン革命防衛隊に関連する大学や近隣コジールのミサイル工場で爆発が確認されたと海外メディアが報じた。これに先立ち、イスラエル空軍機はキャラジにある遠心分離機工場も空襲した。
イスラエル軍は13日から、イランの核開発プログラムや戦略ミサイルの生産能力といった実質的な脅威の排除を目指し空襲を継続している。これまでイランでは、少なくとも224人が死亡した。イランはイスラエルに向け370発以上のミサイルと数百機のドローンを発射し、イスラエル側では24人が死亡、500人以上が負傷した。
海外メディアは、ハーメネイー氏がイスラエルとの戦いを決意しているものの、イラン革命防衛隊司令官や軍参謀総長、戦略ミサイル担当司令官など、多数の高官が空襲で死亡しており、戦略的な誤りを犯す可能性が高まっていると指摘している。これらの高官はハーメネイー氏に忠誠を誓い、定期的に会合を持ち重要問題を協議してきた。
イスラエル現地メディア「タイムズ・オブ・イスラエル(TOI)」は情報筋の話として、ハーメネイー氏がイランの防衛能力を過大評価しており、国内の不安定さも危険な水準にあると報じた。また昨年9月にはレバノンの親イラン民兵組織「ヒズボラ」の指導者、ハサン・ナスララ氏がイスラエル軍の空襲で死亡した。12月にはシリアの親イラン政権であるアサド政権が反政府勢力により崩壊し、イランは重要な同盟国を失った。
イランと緊密な関係にあるロシアが最近のイランとイスラエルの衝突を注視しており、その背景に関心が集まっている。ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、イランがウクライナ侵攻中のロシアにドローンを提供し組立工場の建設を支援した後、今年戦略的パートナーシップ協定を結んだが、5か月経った現在もロシアがイランを支援する兆しは見られないと報じた。
ロシア・イラン関係の専門家ニキータ・スマギン氏は、イランがイスラエルだけでなく米国とも衝突する可能性を懸念するロシアが、イラン支援を価値のないものと見なしていると述べた。NYTは、ロシアが現在ウクライナ戦争を優先しており、イランの台頭を望まないサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などの湾岸諸国との良好な関係維持を図っていると分析している。一部の中東諸国のおかげでロシアが西側の制裁を乗り越えられたことへの見返りという側面もあるという。
中東の緊張による原油価格上昇は、産油国であるロシアにも利益をもたらしている。アナリストらは、ドナルド・トランプ米大統領との関係改善を望むウラジーミル・プーチン露大統領が、イランの核兵器保有を望んでおらず、今後この衝突を終結させるための交渉に参加する可能性があると指摘している。
BBC放送は、親ロシアだったシリアのアサド政権崩壊に続き、イランでも政権交代が起これば、ロシアはもう一つの戦略的パートナーを失う可能性があり、深刻な懸念を抱くことになると報じた。
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