
米ニューヨーク州が、国内では約15年ぶりとなる大規模な新設原子力発電所の建設に踏み切る。急増する電力需要と環境対策の両立を目指す動きとして注目されている。
23日(現地時間)、ニューヨーク州のキャシー・ホウクル知事は『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』のインタビューで、州営のニューヨーク電力公社に対し、老朽化した既存の原子力施設に最低でも1ギガワット(GW)の発電容量を新たに追加するよう指示したと明らかにした。1GWは約100万世帯分の電力供給に相当し、ホウクル知事は「企業や住民が電気料金の安定性やコストに不安を感じる必要がないようにしたい」と述べた。
建設予定地としては州北部の郊外エリアが検討されており、新型の原子炉設計も同時に選定される。プロジェクトは州の電力公社が単独で進める可能性もあるが、民間企業との連携による実施も視野に入れているという。
WSJによれば、米国でこの規模の新設原子力発電プロジェクトが進行するのは2000年代後半以来のこと。これまでアメリカでは、1979年のスリーマイル島事故や2011年の福島第一原発事故を受けて反原発世論が高まり、さらに建設費の高騰や厳格な規制が重なり、新規原発の建設が事実上停滞していた。
だが近年、AI開発やデータセンター拡張などによる電力需要の急増、そしてカーボンニュートラル実現に向けた政策目標が追い風となり、原子力発電が再び「現実的な選択肢」として評価され始めている。
今年5月にはドナルド・トランプ大統領も、新設原発建設にかかる許認可プロセスを最大18カ月に短縮する大統領令に署名。WSJは、今回のニューヨーク州によるプロジェクトが、トランプ政権が掲げる原子力政策の実行力を測る試金石になると指摘している。
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