
東京の地価が独走状態となっている。国税庁が発表した2025年の路線価(1月1日基準)によれば、東京都の標準宅地の平均上昇率は8.1%で、全国平均の2.7%を大きく上回り、最も高い伸びを示した。地方や海外からの人口流入が続くなか、新築マンションへの需要が高まり、さらには外国人投資マネーが加わることで、価格上昇に拍車がかかっている。
特に東京23区では、用地不足で供給が減少する一方、人口増加で住宅需要が膨らみ、需給のバランスが崩れている。不動産経済研究所によると、2024年の23区における新築マンションの平均価格は前年比11%増の1億1,632万円だった。加えて、三菱UFJ信託銀行の調査では、千代田区・港区・渋谷区の新築マンション購入者のうち外国人の割合が20~40%に達し、前年の10~30%から増加している。
都心部の価格上昇が進む中、相対的に価格が抑えられている周辺地域の人気も高まっている。足立区・北千住駅前では前年比26%、中野駅前では24.7%の上昇率を記録。近郊都市でもさいたま市・大宮駅前が11.9%、千葉市・千葉駅前が11.2%の上昇を見せており、いずれも駅周辺の再開発が進む地域だ。
長期的に見ると、東京と地方の不動産価格格差はさらに広がる可能性が高い。三井住友トラスト基礎研究所の大谷咲太氏は「物価高と人手不足により建設費が高騰し、収益が見込める都市部の開発が優先される。一方で地方の再開発は厳しくなる」と指摘している。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2050年に2020年より人口が増えると予想されているのは東京都のみで、他の道府県では減少傾向が続く見通しだ。
一方で、東京の地価高騰は副作用も招いている。不動産情報サービス「アットホーム」によると、2025年5月時点で東京23区の単身者向けアパートの平均家賃が初めて10万円を突破した。これは若者や学生にとって大きな経済的負担となり、東京への過度な集中が、大規模災害時に深刻な被害をもたらす可能性があるとの懸念も出ている。
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