ドナルド・トランプ米政権の制裁の矢面がキューバ政権に向けられている。これまでキューバに対して強硬な姿勢を示してきたトランプ大統領は、制裁を一層強化してキューバ政権を圧迫する狙いがあるとみられる。

現地時間30日、主要海外メディアによると、ホワイトハウスは、トランプ大統領がキューバに対する経済制裁を盛り込んだ国家安全保障大統領覚書(NSPM)に署名したと発表した。ホワイトハウスは「NSPMは、キューバ国民を犠牲にしながら、キューバ政府、軍、情報機関、治安機関に不均衡に利益をもたらすという経済慣行を終わらせる」と説明した。
この措置により、キューバ軍と関連する国営企業ガエサ(GAESA)、およびその系列会社との直接・間接的な金融取引が禁止される。ただし、米国の政策目標を推進するものか、キューバ国民を支援する取引は例外とされる。数十の子会社を持つガエサは、キューバ国内のすべての小売チェーン、ホテル、観光バス、レストランなどを所有・運営し、キューバ経済の40%を占めているとされている。
米国人のキューバ観光も法的に禁止される。すべての旅行関連取引について、最低5年間の定期的な監査と義務的な記録保管規定の遵守が求められる。さらに、米国はキューバに対する経済制裁を支持し、国連を含む国際社会のキューバ制裁のら解除要求にも反対することが明記された。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「大統領覚書はバイデン政権のキューバに対する一部制限緩和措置を後退させるものだ」と評価した。キューバ政権に対する強硬策を主張してきたカルロス・ギメネス米下院議員(共和党・フロリダ州選出)は、SNSのX(旧ツイッター)で「この政策はキューバ政権の最も弱い部分である旅行とドルに打撃を与える」と述べ、「我々はキューバ政権の息の根を止めなければならない」と主張した。
キューバに対して強硬姿勢を貫いてきたトランプ大統領は、昨年1月の就任直後からキューバへの制裁強化を進めてきた。
トランプ大統領は就任初日に、バイデン前大統領が退任直前にキューバを米国のテロ支援国リストから除外するという決定を撤回し、キューバ軍、情報機関、治安機関またはその要員の管理下にある企業との特定の取引を禁止した。
トランプ大統領は政権1期目にも、キューバへの制裁を強化していた。2020年5月、米国務省はキューバを北朝鮮、イラン、シリア、ベネズエラとともに2019年基準で米国の武器輸出管理法上の「対テロ非協力国」に指定。キューバがこのリストに掲載されたのは5年ぶりだった。トランプ大統領の任期終了直前の2021年初めには、バラク・オバマ前政権がキューバをテロ支援国から除外した決定を覆し、キューバをテロ支援国として再指定していた。
今回の措置がトランプ大統領の支持基盤を強化するための動きだとの分析もある。米政治メディアのポリティコは「この措置はマイアミのキューバ亡命者コミュニティーへの配慮だ」とし、「このコミュニティーは大統領選でトランプ大統領を支持しており、米国がキューバの共産主義政権を打倒する助けになることを望んでいる」と指摘した。
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