巨大爬虫類が米トランプ政権の新たな国政課題として浮上している。米国土安全保障省がワニとニシキヘビが生息するフロリダ州エバーグレーズ湿地に不法移民の逮捕・収容施設を設置すると、ドナルド・トランプ米大統領が即座に視察し、この施設を大々的に宣伝した。トランプ大統領は1日の視察で「ワニは速い」と述べ、「不法移民が刑務所から脱走すれば、我々は彼らにワニから逃げる方法を教えてやる。一直線には走るなと」と冗談を飛ばした。
米国土安全保障省は前日、公式フェイスブックでワニに米移民・関税執行局(ICE)の帽子をかぶせた合成画像を投稿し、「近日公開」と添えた。突然すぎる爬虫類の国政課題化を予見していたかのように、米陸軍は最近、これまで秘匿されていた特殊任務部隊を公開した。米陸軍はホームページで第6レンジャー訓練大隊に所属する「爬虫類チーム」の存在を紹介し、教官でもある所属隊員の対民活動などの日課も伝えた。このチームは米軍で唯一の爬虫類専門部隊である。

彼らの本来の任務は、空挺部隊など最強の戦力を誇る特殊部隊を対象に爬虫類に関する生存マニュアルを教育することだ。しかし、その対象は軍人だけでなく地域社会の市民にまで拡大され、実際に大きな助けになっているという。米陸軍は4月に行われた「爬虫類チーム」所属隊員の対民教育の様子を紹介した。このチームに所属する女性教官、ジュリアンヌ・C・ジャクソン軍曹(Julianne C. Jackson)とメンバーらが、蛇やワニなど生きた「教材」を持参し、直接見せながら自身の経験と知識を共有した。
極限環境での生存能力を高めるため厳しい訓練を受ける特殊作戦部隊員にとって、爬虫類への対処法は必須スキルだ。特にエバーグレーズ湿地に隣接するフロリダ州では、住宅地でも大型爬虫類の出没が多いため、爬虫類への対応要領は軍人だけでなく、地域社会の住民も習得すべきだ。
これは、険しい山岳地域を抱える北西部のモンタナ州、ワイオミング州、アラスカ州で、クマやピューマに遭遇した際の対処法を教えるのと同じ理屈だ。「爬虫類チーム」は実戦経験と爬虫類に関する知識が豊富なベテラン下士官で構成されている。

ジャクソン軍曹は「特にフロリダ州では、特殊作戦訓練生や地域民にとって、夏季に遭遇する可能性のある爬虫類に関する知識を蓄えることが重要だ」と述べた。湿地や森林地帯で匍匐や木登りなどの地形突破訓練中に爬虫類と遭遇する可能性が非常に高いため、毒蛇の識別などの基本的な爬虫類知識が重要だという。
爬虫類チームの教官たちは代表的な「教材」である蛇を紹介した。日本にもアオダイショウやアカマダラのような無毒蛇がいるように、米国の全ての蛇が毒蛇というわけではない。例えば、ブラックレーサーヘビやパインヘビは無毒蛇で、噛まれても毒が回る心配はない。一方、ダイヤガラガラヘビやサンゴヘビは恐ろしい猛毒蛇だ。

毒はないが致命的な危険をもたらす蛇もいる。アジアから侵入した外来種で、成長すると体長が4メートルを超えるビルマニシキヘビだ。「爬虫類チーム」の教材にはフロリダ州の名物であるワニ6匹も含まれる。
爬虫類に関する知識を深めることは、フロリダ州の自然生態系への理解を高めることにもつながる。そのため、「爬虫類チーム」所属の隊員たちはフロリダ州政府の野生生物局と緊密に連携している。動物園の飼育員や獣医、爬虫類学者などで構成される野生生物局の職員は、爬虫類チーム所属の隊員に劣らぬ爬虫類への理解度を持ち、その取り扱いにも熟練している。

爬虫類チームのメンバーは、将来この部隊への配属を希望する隊員たちに「爬虫類を扱った経験がない者も歓迎する」としつつ、「ただし、気味の悪いものや恐ろしいものに耐える忍耐力があれば十分な資格がある」と述べた。
爬虫類は第二次世界大戦後、冷戦期に入った1950年代から米国特殊作戦部隊の訓練課程で重要な位置を占めてきた。湿地生存訓練などを通じて蓄積された経験が「爬虫類教育マニュアル」として確立されたという。
爬虫類チームの所属部隊は4月25日、ジョージア州の陸軍基地で部隊施設を一般公開するオープンハウス行事を開催するなど、部隊の活動を民間にも積極的に紹介している。米陸軍は、隊員の戦闘能力向上だけでなく 地域社会にも貢献する爬虫類チームを、創設250周年を迎えた米陸軍の革新を示す事例として挙げた。
注目の記事