
中国が米国の対中貿易制裁にもかかわらず、5月まで東南アジアを経由した迂回輸出を続けていたことが判明した。米トランプ政権は8日(現地時間)の関税交渉期限を前に、これを梃子に「原産地偽装」の根本的な阻止を図る可能性が高いとみられている。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、中国の5月の輸出総額は前年同期比4.8%増加したという。同期間の対米輸出は43%減少したものの、ASEAN(東南アジア諸国連合)とEU(欧州連合)向け輸出がそれぞれ15%、12%増加し、これを相殺した。
国別では、前年比で輸出が減少したのは米国と韓国のみだった。一方、香港、ベトナム、日本、インド、ドイツ、マレーシアなどは前年を上回った。東南アジアを経由して米国へ迂回輸出することで、米国の関税による制裁を回避したのだ。
英コンサルティング会社「キャピタル・エコノミクス」のチーフアジアエコノミスト、マーク・ウィリアムズ氏は「1回目の米中貿易戦争時も同様だった」とし、「米国の中国製品輸入は急減したが、ベトナムやメキシコ製品の輸入は急増した」と述べた。
キャピタル・エコノミクスの独自調査によると、5月の1か月間で前年同期比30%増の約34億ドル(約4,924億4,160万円)相当の中国製品がベトナムを通じて迂回輸出されたという。このうち、プリント基板・携帯電話の部品・フラットディスプレイモジュールなどの電子製品の輸出額は26億ドル(約3,765億1,868万円)で、前年比54%も急増した。同期間のインドネシア経由の間接輸出も25%増加したという。
この期間、欧州向けの中国製品輸出も増加したが、これは経由地である東南アジア向け輸出とは性質が異なるとみられる。トランプ政権が今年、800ドル(約11万5,852円)以下の商品に無関税を認めていた「デミニミス条項」を廃止したため、輸出先を失った中国製品が中国のeコマース企業であるTemu(テム)やSHEINなどを通じて欧州に大量流入している形だ.
EUも小包に2ユーロ(約341円)の包装費を課すなどの対策を検討中とされる。
市場では、8日に米国のドナルド・トランプ大統領が定めた相互関税の猶予期限が切れることで、中国の迂回輸出が減少する可能性が高まったとの見方が強まっている。米国がベトナムとの貿易協定を前例として、迂回輸出品に関する規定を追加する可能性が高いというわけだ。
これに先立ちトランプ政権は、米国に輸入されるベトナム製品に20%の関税を課し、ベトナムに輸出される米国製品には関税を課さない貿易協定を締結した。関税率は従来の46%から大幅に引き下げられたが、第三国がベトナムを経由して米国に輸出する迂回輸出品には40%の関税を課すことになった。これは中国を念頭に置いた措置とみられる。
FTは「多くの国がまだ米国と貿易協定を結んでいない状況だ」とし、「今後締結される協定にはこうした迂回輸出に対する追加関税が含まれる可能性もある」と指摘した。現時点で貿易協定を結んでいるのは英国、ベトナム、中国の3か国のみで、韓国、日本、EU、インドなども水面下で協議を続けている。
注目の記事