
イスラエルとハマスの戦闘が続くガザ地区情勢に抗議する「親パレスチナ派」デモを主導し、米国の移民当局に拘束・国外退去処分の危機に直面していた米コロンビア大学の卒業生、マフムード・カリル氏(30)が、ドナルド・トランプ米大統領の政権を相手に2,000万ドル(約29億3,918万円)の損害賠償訴訟を起こす方針だという。
10日(現地時間)、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じたところによると、カリル氏の代理人は、トランプ政権がパレスチナへの支持を理由にカリル氏の身柄を拘束し、強制送還を図ったと主張したという。これは政治的な意図での行為であり、連邦不法行為請求法(FTCA)に基づいて損害賠償を求めると明らかにしたとのこと。FTCAは、連邦政府の違法行為によって被害を受けた市民に対し、法的救済受けられるようにすることを目的とした法律である。
カリル氏は別途発表した声明の中で、「トランプ政権は政治的報復と職権乱用について責任を負うべきだ」とし、訴訟で得た賠償金は、自身と同様に米政府やコロンビア大学から標的とされた学生たちを支援するために活用する意向を示した。
カリル氏は昨年、コロンビア大学で行われた反戦デモにおいて、大学側との交渉や報道対応などを担い、デモを主導する役割を果たしたとされている。この活動が理由でトランプ政権発足直後、米移民・関税執行局(ICE)の視対象となり、今年3月にはコロンビア大学近くの自宅アパートでICE職員により拘束されたという。
その後、ルイジアナ州の移民収容施設に3カ月以上拘束され、先月21日に104日間の拘留を経て保釈されたとのこと。
代理人によれば、カリル氏はICEの逮捕と104日間の拘束によって第1子の誕生や大学の卒業式に立ち会う機会を逃し、また、拘留期間中の栄養不足や慢性的な睡眠不足によって体重が約7キロ減少するなど、肉体的・精神的な被害も被ったという。
加えて、当局がカリル氏を「反ユダヤ主義者」「テロ同調者」とする主張を展開したことにより、自身と家族の安全にも大きな不安を抱えるようになったとされている。
一方で、カリル氏側は、米政府が公式に謝罪し、親パレスチナの見解を理由とする拘束・送還政策を廃止するのであれば、損害賠償金の請求を取り下げる意向もあると表明している。
カリル氏はロイター通信の取材に対し、「この訴訟が、トランプ政権に対する抑止力として機能することを願っている。彼は『金の言語』しか理解しないということを私ははっきりと認識している」と語り、訴訟に踏み切った背景を説明したという。
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