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2025年07月21日月曜日
ホームニュース「ドル安を唱える男がドルを救う?」トランプのステーブルコイン戦略、選挙を睨んだ二枚舌か

「ドル安を唱える男がドルを救う?」トランプのステーブルコイン戦略、選挙を睨んだ二枚舌か

トランプ大統領が推進する仮想通貨3法案、その狙いは何か

ドナルド・トランプ大統領が支持する仮想通貨関連の3法案が17日(現地時間)、米下院を通過した。特にステーブルコインの規制枠組みを整備する「ジーニアス法案」は上下両院を通過し、アメリカ政府の親仮想通貨政策を主導する「仮想通貨大統領」トランプ大統領の署名を待つ段階だ。この法案はステーブルコインの使用促進に必要な規制の枠組みを正式に整備し、制度化を意味するため、通貨の未来とインターネット金融システムにおいて重大な転換点となる見込みだ。

トランプ大統領が推進する仮想通貨3法案は、デジタル資産関連規制を明確化する「CLARITY法案」、連邦準備制度のCBDC(中央銀行が発行するデジタル通貨)発行を禁止する「CBDC監視国家防止法案」、ステーブルコインの制度化を目指す「ジーニアス法案」などだ。

米下院は今週を「クリプトウィーク(暗号資産週間)」と定め、3法案を今週中に可決する予定だった。しかし、14日に下院の規則案が否決され、一時停滞した。トランプ大統領は15日、急遽共和党下院議員約10人を ホワイトハウス に呼び説得するなど水面下で動き、16日夜に規則案を可決させ、17日の本会議通過につなげた。

引用:Getty Images
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ステーブルコインの「効果」…国債の需要が増え、財政赤字が緩和

ステーブルコインは、米国債需要と密接に関連している。特にUSDC(USD Coin)やUSDT(テザー)などドル連動型ステーブルコインは、国債を担保として保有し安定性を確保している。ステーブルコインが活性化すれば、国債需要は爆発的に増加すると予想される。

ステーブルコイン発行会社は、1ドル=1コインの価値を保つため、米国の短期国債を担保として保持している。これにより国債需要が増加する。例えばUSDC発行元のサークルは準備金の88%を12日満期の国債で保有している。先月時点でステーブルコイン発行会社が保有する米国債規模は1,400億ドル(約20兆8,354億7,400万円)に達したとされる。これは一部の国の中央銀行が保有する米国債規模に匹敵する水準だ。

スタンダードチャータード銀行は、2028年までにステーブルコイン市場が2兆ドル(約297兆6,496億3,000万円)規模に成長し、毎年4,000億ドル(約59兆5,278億2,100万円)規模の新規国債需要を創出すると予測している。国債需要の増加は、アメリカの深刻な財政赤字を緩和すると期待されている。

引用:ロイター通信
引用:sbs news

ステーブルコイン、ドル連動…ドル覇権の強化

ステーブルコインは米ドルに連動したデジタル資産だ。ドルの価格安定性を基に、様々な金融・商業用途に活用できる。サークルが発行するUSDCは、イーサリアム、ステラ、ソラナなど様々なブロックチェーンで使用可能だ。

米ドル預金で価値が保証され、連邦預金保険公社(FDIC)の保険が適用されるため、安全性が強みだ。市場シェア1位のステーブルコインであるUSDTは、今月時点で時価総額が1,584億ドル(約23兆5,858億2,177万6,000円)に達している。

アメリカはこうしたステーブルコインを利用して、むしろドル覇権を強化している。国際決済銀行(BIS)が先月発表したコイン関連報告書によると、2017年第1四半期から2024年第2四半期までのUSDT取引の約90%がアメリカ以外で発生した。1,584億ドル(約23兆5,725億2,300万円)の90%、つまり1,425億ドル(約21兆2,063億8,700万円)がステーブルコインの形で世界各国で流通していたことになる。

特にインフレ率が高い新興国でステーブルコインの人気が高い。現地の物価が急騰し通貨価値が急落した国々では、ドルに連動するステーブルコインを保有することで、比較的安定した決済や貯蓄が可能になるためだ。

また、現金の場合、両替を経て決済するには1〜2日かかり、両替・仲介手数料も負担する必要がある。一方、ステーブルコインは比較的安価な送金手数料だけで24時間いつでも希望額を支払えるため、より効率的だ。この傾向が広がれば、アメリカのステーブルコインは世界各国の通貨量をさらに吸収すると見られる。既にステーブルコインの時価総額は2,500億ドル(約37兆2,038億5,800万円)に達し、このうちドル連動型ステーブルコインは98%を占める。

引用:tronweekly
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ステーブルコインの流通量増加は、すなわちドル需要の増加を意味する。ステーブルコイン発行会社は1コインに相当する1ドルの価値を維持するため、コインの時価総額相当額をドルで保有する必要がある。1億コインを発行した場合、1億ドル(約148億8,190万9,000円)を保有しなければならない。

発行会社は保有ドルの70〜80%を満期1年未満の米国債で運用し、そこから生じる利子で収益を上げる。ステーブルコインはドルに変換され、そのドルが米国債へと流れる資金循環が形成されている。

このようにステーブルコインが米国債需要を支えることで、アメリカの基軸通貨としての地位は強化される。BISは、5営業日以内に35億ドル(約5,208億5,804万円)規模のステーブルコインが米国債に流入すると、10営業日以内に米国債金利が平均0.02〜0.025%低下する効果があると分析している。金利が下がれば、アメリカは国債発行時のコスト負担を軽減できる。

アメリカの基軸通貨としての地位は、世界中で米国債が購入されることで維持される。これによりドルが世界中に広がり、そのドルが再び米国債購入に投入される循環構造が成立する。結局、ステーブルコインが米国債需要を支え、ステーブルコインの地位強化がドル覇権をさらに強固にする結果をもたらすのだ。

引用:Getty Images
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ドル安を誘導するトランプ大統領と矛盾?

トランプ大統領は世界を相手に関税攻勢をかけている。関税を課すことで、現在の赤字である対外貿易構造を黒字に転換させる狙いだ。

これに加え、トランプ大統領は貿易黒字実現のため、一方でドル安を追求する可能性が指摘されている。

資本市場研究院の「トランプ政権の関税・為替政策分析と対応方向」報告書によると、トランプ政権は貿易赤字の根本的原因がドル高にあると見て、関税引き上げとともにドル安を誘導すると予測されている。

トランプ政権の第1次貿易戦争が関税戦争だったとすれば、第2次は為替戦争になる可能性もあるということだ。

ドル安とは、ドルの価値が比較通貨に対して低下する現象を指す。我々がよく「為替が上がった」と言うときは、ドル安を意味する。この場合、アメリカの輸出品に価格競争力が生まれ、輸出が拡大する可能性がある。

しかし、ハナ金融研究所は先月「ステーブルコインが金融市場に与える影響」報告書で、ステーブルコインはドル高につながると予測している。ドル安を誘導するトランプ大統領がステーブルコインの活性化を後押しすれば、ドル高を招きかねないとの懸念も広がっている。

とりあえずトランプ大統領は、ドル安で貿易黒字を追求する一方、ステーブルコインを通じてドルの基軸通貨としての地位を固め、二兎を追う姿勢を見せることになりそうだ。

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