
マイクロソフト(MS)は、米国防総省などの政府機関に提供するクラウドサービスに自社の中国人エンジニアがアクセスできないよう内部規定を改定した。エンジニアを装ったスパイなどが米政府のデジタルインフラに「マルウェア」を仕込む可能性があるとの警告を受けての対応だ。
MSで渉外トップを務めるフランク・ショー氏は18日(現地時間)、SNSのX(旧Twitter)で「米国の監督下にある外国人エンジニアへの懸念に対応し、MSは中国のエンジニアリングチームが米国防総省の政府クラウド関連サービスに技術支援を提供しないよう、米政府顧客向けの支援内容を変更した」と発表した。
米調査報道ニュースサイト「プロパブリカ」は15日、MSが中国人エンジニアを活用して米国防総省の機密コンピューターシステムの保守・管理体制を支援していたと報じた。米政府機関は機密データを扱うには特別な権限が必要で、米国防総省はこの権限を米国市民または永住権者に限定している。そのため、MSは「デジタル・エスコート」と呼ばれる単純な管理職を雇用し、海外のエンジニアが作成したコードを貼り付ける作業のみを行わせていた。
プロパブリカによると、MSの元職員マシュー・エリクソン氏は「誰かが(中国人開発者の)スクリプトを実行し、実際にマルウェアが作動しても、(エスコートは)全く気付かなかっただろう」と指摘した。つまり、米政府のクラウドシステムが中国のスパイなどの脅威に完全に晒されていたということだ。報道後、ピート・ヘグセス米国防長官は「これは明らかに容認できないことであり、特に今日のデジタル脅威環境下ではなおさらだ」と批判した。
AI開発ツール企業の「カーソル(Cursor)」も、中国ユーザーによる自社製品の利用を遮断した。IT業界の米メディア「ザ・インフォメーション(The Information)」によると、カーソルはこれまでAnthropicの「Claude Sonnet 4」、グーグルの「Gemini 2.5 Pro」など、様々なAIモデルを自社のプログラムに統合して提供してきた。Anthropic、グーグル、オープンAIなどは現地規制により中国で生成AI型サービスを提供していなかったが、カーソルを通じて迂回接続が可能だった。
エヌビディアの中国輸出用グラフィックス処理装置(GPU)「H20」の中国輸出が再開されたが、政界では依然として輸出中止を求める圧力が強い。米下院議会中国特別委員会のジョン・モーレナール委員長は18日、ハワード・ラトニック米商務長官宛ての書簡で「(H20の)輸出禁止措置は正しかった」とし、「H20チップを中国に販売することは、中国のAI能力を強化することになる」と主張した。
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