
ドナルド・トランプ米大統領の2期政権発足後に本格化した関税政策をめぐり、日米両政府が交渉を妥結した。
米国側は日本製品に対して当初予定していた25%の関税を15%に引き下げる一方、日本側は5,500億ドル(約80兆9,011億4,800万円)を超える大規模な対米投資を約束したという。
日本車にかけられる米国の関税も、これまでの半分程度にまで引き下げられる見通しとなった。
トランプ大統領は22日(現地時間)、日本製品に15%の相互関税を課し、日本が5,500億ドル規模の対米投資を約束する内容の貿易交渉で合意に至ったと発表した。
日本側はこれまで、4月2日時点で24%の相互関税を示していたが、トランプ大統領はその後、8月1日から新たに25%を適用すると発言していた。
今回の相互関税15%という数値は、米国がこれまで交渉を妥結した国の中で英国の10%を除けば最も低い水準とされる。なお、米国はベトナムに20%、インドネシアに19%、フィリピンに19%とも合意に達しているという。
トランプ大統領はこの日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に「日本との間で歴史上最大規模の取引を完了した」と投稿し、「私の指示のもと、日本は米国に5,500億ドルを投資し、米国はその利益の90%を得る」と明かした。
また、「この取引によって数十万の雇用が生まれることになる」としたうえで、「前例のない事例だ」と強調した。
さらに、「重要なのは、日本が自動車やトラック、米、特定農産品、その他の品目に関する貿易を開放する点だ」とし、「日本は米国に15%の関税を支払うことになる」と語った。
トランプ大統領は「米国にとって非常に希望の持てる時期であり、特に日本との良好な関係を維持できる点に大きな意味がある」とも付け加えた。
交渉の過程では、日本が「対米投資ファンド」の創設を提案したとの情報もある。ファンドの規模は当初4,000億ドル(約58兆8,553億4,200万円)程度とされていたが、交渉が進む中で5,500億ドルまで拡大したとみられる。
この日トランプ大統領は、ホワイトハウスで開かれた共和党議員との夕食会でも、日本がアラスカで米国と共同で液化天然ガス(LNG)開発を行う合弁事業に着手する計画を明らかにした。
トランプ大統領による交渉合意の発表を受けて、石破茂首相は23日、首相官邸で記者団に対し「国益をかけて、双方が全力でぎりぎりの交渉を行ってきた」と述べ、「今後は赤澤亮正経済再生担当相から報告を受け、内容を精査していく」との姿勢を示した。
一方、NHKは日本政府関係者の話として、日本車への関税については、今年4月以降追加された25%の上乗せ分を半分の12.5%に引き下げたうえで、従来の2.5%を加えて最終的に15%とすることで合意に至ったと伝えている。
野村総合研究所の木内登英エコノミストはこの日発表した報告書で、「相互関税が25%の場合、日本の国内総生産(GDP)は0.85ポイント押し下げられるが、15%の場合は0.55ポイントの低下にとどまる」とし、日本経済への影響が緩和されたとの見方を示した。
同報告書では、「合意の詳細は依然として明らかになっていない」としたうえで、「日本がどのような譲歩案を提示したのかといった重要な点は、現時点では不透明だ」としている。また、「日本は当初、自動車関税の撤廃を求めていたことを考えると、一定程度の関税引き下げに応じたことは譲歩と受け止められる」と分析している。
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