
米国と日本が対米輸出品に一律15%の関税を課す大型貿易協定に合意したことを受け、世界の株式市場が広範囲にわたって上昇した。とりわけ、自動車の関税率が25%から15%に引き下げられたことにより、日本、韓国、ドイツといった主要な輸出国の自動車メーカー株が軒並み急騰した。
23日(現地時間)の発表直後、国内市場ではトヨタ、ホンダ、マツダなど大手自動車銘柄が10%超の急騰を記録。日経平均株価は1年ぶりとなる3.5%の大幅高となった。不透明感の後退によって日本銀行が利上げに踏み切る可能性が意識され、日本国債には売り圧力が集中。10年物国債利回りは8.5ベーシスポイント上昇し、1.585%まで跳ね上がった。
関税引き下げの報に反応したのは国内企業だけではない。韓国市場では現代自動車と起亜の株価がそれぞれ7〜8%以上上昇し、KOSPIは0.44%高で取引を終えた。欧州では、フォルクスワーゲン、BMW、メルセデス・ベンツ・グループの株価が取引開始直後に4%上昇し、ポルシェは7.1%高を記録。米・EU間の貿易協議の進展期待も高まり、STOXX600指数は1%上昇した。
米国でも株価指数先物が軒並み上昇し、S&P500先物が0.4%、ナスダック先物が0.2%、ダウ先物は0.5%の上昇となった。
トランプ大統領と石破茂首相による共同発表によれば、今回の協定により日本は全ての対米輸出品に一律15%の関税を受け入れる代わりに、アラスカのLPGガス田など米国内に5,500億ドル(約80兆3,880億円)の投資を行う。また、米国産のコメや農産物の輸入を拡大し、自動車・トラックの安全基準を米国と同等に統一することにも合意した。
トランプ大統領は自身のSNSで「おそらく史上最大規模の取引」と表現し、「日本の投資による利益の90%は米国が得る」と述べた。また、「日本が自動車、トラック、農産物に関する貿易を開放することになった」と強調した。
対米自動車輸出は日本経済にとって重要な柱であり、2024年時点で輸出全体の28.3%を占め、貿易黒字の半数超を構成している。このため、関税率が25%から15%に引き下げられたことは、日本の輸出産業にとって大きな前進と受け止められている。
一方で、カナダやメキシコの自動車関連サプライヤーが25%の関税を課されている現状に対し、米国の業界団体からは日本との「不均衡な優遇措置」に対する不満の声も上がっている。
欧州自動車工業会(ACEA)によると、2024年に欧州から米国への自動車輸出は389億ユーロ(約6兆6,930億円)、75万8,000台に達し、米国から欧州への輸出台数の4倍以上にのぼる。こうした背景もあり、シティバンクのアナリストは「数量制限なく関税を引き下げたことは異例で、現在進行中のEUとの交渉にも影響を与えるだろう」と分析している。
注目の記事