
韓国政府は、8月1日を期限とする米韓通商交渉の妥結に向けて全力を注いでいるが、交渉後も「トランプリスク」が続く可能性が高いとの見方が広がっている。
ドナルド・トランプ米大統領に見られる、合意を覆すような交渉スタイルや一方的な解釈の余地、さらに政治日程に左右される協定運用への懸念が根強く、交渉後の制度的な対応や戦略的備えが不可欠だという指摘が相次いでいる。
韓国のヨ・ハング通商交渉本部長もかつて「すべての交渉が終わった瞬間から、その後も油断できない状況になる」と述べている。
24日には日本を含む主要国が次々と米国との貿易交渉で合意に至る中、韓国政府も最終交渉の収束を急いでいる。
しかし、専門家らは「むしろ合意後が問題だ」と警鐘を鳴らしている。
実質的な貿易収支の改善効果が乏しければ、米国が再び交渉の場を求めてくる可能性は残されたままだという。
特に今回の交渉で焦点となっている非関税障壁の緩和策について、その実効性がどこまで担保されるのかは不透明とのこと。
通商専門家によれば、非関税障壁の緩和は産業構造や市場の特性によって効果に差が生じ、貿易赤字の改善効果も限定的にとどまる可能性があるという。そのため、米国が「成果が不十分」との理由で再交渉を求める展開も十分に考えられるという。
韓国スンシル大学のク・ギボ経済学科教授は、「今回の交渉で一時的に貿易赤字が縮小する可能性はあるが、米国が韓国に販売できる品目は限られており、根本的な赤字構造の転換は難しい」とし、「状況次第では再交渉の可能性も以前として残る」と指摘した。
さらにク教授は、「今回の交渉では、まだ関税が課されていない半導体やバイオなど主要品目も、今後課税対象になる可能性があることを念頭に置く必要がある」とも警告している。
交渉が妥結しても、安定的な運用が保証されない構造もまたリスク要因となっている。
現在のトランプ政権は、世界貿易機関(WTO)など多国間枠組みよりも二国間合意を重視し、公式文書よりも口頭の約束や曖昧な文言による合意に傾く傾向がある。このようなケースでは、米国側が一方的に合意内容を解釈したり、政治的都合に応じて協定そのものを揺るがす余地が大きくなるという。
実際、来年の中間選挙を控え、トランプ大統領が保護主義的な姿勢を強めたり、貿易赤字を政治争点化して支持拡大を狙う可能性も指摘されている。
交渉が妥結した後でも、米国内の雇用や貿易収支の改善効果が目に見える形で現れなければ、トランプ政権が再び協定の見直しを求めることも予想される。
こうしたリスクに備えるには、交渉の枠組み自体を長期的かつ制度的に設計することが重要だと専門家は助言している。
韓国スンミョン女子大学のカン・インス経済学科教授は、「現在は米国の要求に追われる状況だが、交渉が安定段階に入れば、合意の覆しや解釈を巡る論争を防ぐために、条項を明確にし、手続きも制度化する必要がある」と指摘した。
さらに「トランプ大統領の任期はまだ長く、貿易収支の不均衡が解消されなければ、同じ要求が繰り返される恐れがある」と警鐘を鳴らした。
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