
米トランプ政権は29日、スウェーデン・ストックホルムで行われた米中の3回目貿易協議において、来月(8月12日)に期限切れとなる対中関税の猶予措置を90日間追加延長することで暫定合意した。5月の第1回協議で90日間猶予された国別相互関税24%を、さらに90日延長するものである。
中国牽制から始まったトランプ政権の関税戦争は、中国に対しては選択的な猶予を繰り返す一方、韓国を含む日本や欧州連合(EU)など、米国の伝統的な同盟国にはむしろ厳しい経済的圧力をかけているとの指摘がある。
この日、スコットランド訪問を終え、米国に戻る専用機内で記者団と会見した米国のドナルド・トランプ大統領は、「スコット・ベッセント米財務長官から電話があり、中国との会談が非常にうまくいったそうだ」と述べ、「ブリーフィングを受けて(合意を)承認するかどうか決める」と語った。
10月末に韓国で開催されるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議の前後に中国の習近平国家主席との首脳会談を検討しているトランプ大統領が、90日追加延長の合意案を覆す可能性は低いとの見方が強い。トランプ大統領はこの日も「年内に習主席と会談が実現するだろう」と述べた。
米中貿易協議に合わせ、北京では経済交流が続いた。28日から訪中した米経済界の幹部で構成するハイレベル代表団は29日、中国の李楽成工業情報化相と北京で会談した。この場には、アップルをはじめ、フェデックス(物流)、オーチス・ワールドワイド(エレベーター)、サーモフィッシャーサイエンティフィック(バイオ)など、米企業の代表が出席した。ボーイング社のブレンダン・ネルソン副社長は、28日に中国民用航空局の宋志勇局長と別途会談を行った。
トランプ大統領は1月、再選直後に中国の不公正な貿易慣行などを理由に、中国製品に高率関税を課す貿易戦争を宣言した。これは、中国の経済成長とグローバルな影響力拡大を牽制するための戦略的覇権競争の一環であった。グローバル・サプライチェーンを利用した中国の第三国迂回輸出を阻止しようとするトランプ大統領の関税戦争は、同盟国を含む事実上全世界に対する相互関税措置へと拡大した。
しかし、中国が米国に対抗して報復関税を課し、レアアースの輸出を制限して米国のハイテク産業に大きな打撃を与えると、トランプ大統領は比較的弱腰な姿勢を示し、中国関税を連続して猶予している。
4月に中国に145%の超高率関税を課したトランプ大統領は、中国が米国製品に125%の報復関税を課したことを受け、5月の第1回米中協議において、115%ずつ相手側に課していた関税を引き下げた。
その結果、米国が中国に課す関税は現在30%(基本関税10%+フェンタニル関税20%)になっている。さらに、追加で課そうとしていた24%の相互関税は8月12日まで適用を猶予しており、この猶予が今回90日間延長された。
6月の第2回米中協議では、中国がレアアース輸出制限の一部解除を条件に、米国が対中半導体輸出規制を緩和することもあった。一部では、来年初めまで関税の更なる追加猶予が検討されている。ニューヨーク・タイムズ(NYT)は「トランプ大統領の混乱した貿易政策における最大の不確定要素は、米国の最大の輸入相手国の一つである中国との関係の行方だ」と報じている。
関税交渉の一翼を担うハワード・ラトニック米商務長官はこの日、CNBCのインタビューで、貿易協定未締結国に関して、トランプ大統領が全世界に対し25%の相互関税を課すと8月1日に予告した前に「協議を一旦終結させる」と強硬な姿勢を示した。
しかし、実際には中国に対しては異なる基準が適用されている。その間、ベトナムやフィリピン、日本、欧州などの米国同盟国は、数千億ドルの新規投資や自国の貿易市場を大幅に開放することを条件に、15~20%の関税引き下げ協定を締結している。
中国に対しては柔軟な一方で、同盟国には厳しいというトランプ政権の「矛盾した」措置について、米メディアは「共和党内からも『中国との経済・技術・軍事競争でより強硬な姿勢を取るべき』との懸念があがっている」と伝えている。
この日、中国との第3回協議を終えたベッセント米財務長官は、「中国が制裁対象のロシア産原油を引き続き購入すれば、米国が最大500%の関税を課す」と述べたが、トランプ大統領はまだロシア制裁を決定しておらず、「条件付き警告」と見る向きもある。
注目の記事