
日米関税協議で交渉役を担う赤沢亮正経済再生相は、先月31日に『日本経済新聞』のインタビューに応じ、「米国が今後発表する半導体の関税率も、15%で済む可能性がある」との見方を示した。欧州連合(EU)と同様に、日本も最恵国待遇を受けていることを根拠として挙げている。
また、米国が日本の対米投資の進捗を四半期ごとに管理するという主張については、「トランプ大統領や関税を担当する3閣僚と、そのような議論はしていない」と否定した。
米国は現在、半導体や医薬品に対する新たな品目別関税の導入を検討しており、具体的な内容は近いうちに発表される見通しだ。これに先立ち、EUは米国との交渉で、自動車と同様に半導体や医薬品にも15%の関税率が適用されると発表したが、トランプ大統領は「医薬品は除外された」と述べており、依然として不透明感が残っている。
日米は先月22日、自動車や農産物を含む幅広い品目に対し、関税率を相互に15%に統一することで合意した。当初は8月1日から25%の関税率が課される予定だったが、赤沢再生相は「8月1日に大統領令が出て15%になるということが自然な流れだ」とコメントした。
27.5%が課されていた自動車関税も、15%に引き下げることで合意している。ただし、実際の適用時期について赤沢再生相は「多少時間がかかる可能性がある」とし、「速やかな引き下げを米側に強く要請している」と述べた。
今回の交渉で日本は、政府系金融機関を中心に最大5,500億ドル(約82兆9,000億円)規模の対米投資と金融支援を約束した。赤沢再生相は、「国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)の既存制度の枠内で、公的金融機関の支援が行われる」と説明している。
さらに、今回の合意により「当初米国が提示していた高関税と比較すれば、日本は約10兆円の経済的損失を回避できた」と主張した。これは最近の貿易実績と、トランプ大統領の残り任期3年半を前提に試算したものだという。
一方で、これまで関税が課されていなかった品目に新たな関税が導入された場合、価格の引き下げによって企業がその負担を吸収することとなり、経営が苦しくなる可能性があると懸念も示した。発注側が関税コストを負担したとしても、発注量の減少につながる恐れがあるとして、「日本経済の体力を削ることになりかねないため、実態を正確に把握し、万全の対応が求められる」と強調した。
自動車業界については、「25%の関税がそのまま適用されていれば、日本の完成車メーカーは非常に深刻な事態に陥ったはずだ」とし、「15%なら厳しいものの、なんとか乗り越えられるレベルだ」と語った。さらに、「損失を回避できただけでなく、企業にとって先行きの予見可能性が高まった」と評価した。
当初、日本政府は「追加関税の撤廃」を目標に交渉に臨んでいたが、一定水準の関税を受け入れる形で決着した。再交渉の可能性について赤沢再生相は、「実際に関税が残っている状況で、日本としても言いたいことがあるのは当然だ」と語った。
そのうえで、「覇権国が世界秩序や国際ルールを変えようとする中で、その激流を泳ぎ切ることが大事だ」と述べ、「日米で経済安全保障上、重要なサプライチェーンを構築し、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の加盟国拡大などを通じて、日本の貿易の繁栄を実現していきたい」と意欲を示した。
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