
「AI技術は一部の国や企業の独占物であってはならない。中国政府はグローバルAI協力機構の設立を提案する」(中国の李強首相、先月26日上海「2025世界人工知能大会(WAIC)」開幕式)
「AI競争は21世紀を決定づける戦いだ。米大統領として、私は米国の勝利を宣言する」(米国のドナルド・トランプ大統領、先月23日ワシントンDC「AI競争に勝つ:米国のAI行動計画」首脳会議)
米国と中国がAI主導権を巡って激しい競争に突入する中、中国の大規模な国家支援に脅威を感じた米国が920億ドル(約13兆9,575億円)に及ぶ全方位投資を打ち出した。中国は、政府主導のAI戦略、オープンソースAIシステムの拡大、大胆な人材投資により米国を追い越そうと狙う一方、米国ではトランプ大統領が規制撤廃と技術同盟により中国の猛追を阻止しようと必死の様相だ。
李首相は先月26日、「2025世界人工知能大会(WAIC)」の開幕式で、先端技術分野における「包括的な中国」を前面に打ち出した。米国がAI技術および高性能半導体の輸出規制で圧力をかける中、「グローバルサウス諸国の能力強化のために、AI開発の経験や技術製品の共有を行う用意がある」と強調した。

過去10年間、中国政府は自国企業が輸入に依存していた先端産業分野の製造能力構築を支援してきた。米国の対中輸出規制に対抗するのが主な目的だったが、中国はその先を見据えていた。
2017年7月に発表された中国のAI計画目標は「2030年までに中国のAI理論、技術、応用分野を世界最高水準に引き上げる」というものである。2014年以降、中国政府は半導体産業育成基金に1,000億ドル(約15兆625億円)近くを投資し、先月も新興のAIスタートアップに85億ドル(約1兆2,803億円)を新たに割り当てた。
中国南部の杭州市では、地方政府がスタートアップのインキュベーター機能を持つ新たな都市を造成しており、杭州市は今やアリババやディープシークの本拠地として、AI人材の育成拠点へと生まれ変わった。
こうした戦略のもと、中国企業は電気自動車、バッテリー、太陽光パネル分野で先頭に立つ存在になった。さらに、先端AIシステムの核心要素であるコンピューティング能力、熟練エンジニア、データ資源でも先行している。政府支援の資金の大部分は、ファーウェイなどが設計したチップを生産する中国最大の半導体製造業者「SMIC」に集中している。
これに加え、中国企業はシリコンバレーの競合を追い抜くため、米国同様にオープンソースAIシステムに注目している。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)などによると、アリババは昨年、複数の人気オープンソースシステムをリリースし、ファーウェイも今月オープンソースシステムを発表したという。これまで閉鎖型AIを称賛していたバイドゥでさえ、最近、一部システムのオープンソース版を公開した。
中国のAI人材育成はすでに米国を上回っている。米シンクタンク・ブルッキングス研究所によると、中国は毎年、米国の4倍のSTEM(科学・技術・工学・数学)専攻の卒業生を輩出しており、両国の最高AIモデル間の性能差は2024年の9.3%から2月には1.7%まで縮小した。
これに対抗するため、トランプ大統領は先月23日、「米国のAI行動計画」を正式に発表し、関連する行政命令3件に署名した。AI半導体からソフトウェア(SW)、ロボットシステムまでを網羅する「フルスタックのAI輸出パッケージ」をグローバルサプライチェーンに本格的に輸出し、規制の撤廃を意図している。
総額920億ドル(約13兆8,575億円)規模のAI・エネルギー投資には、グーグルのデータセンター・インフラ投資250億ドル(約3兆7,656億円)、ブラックストーンのデータセンターおよび天然ガスプラント投資250億ドル(約3兆7,656億円)、コアウィーブのデータセンター拡張投資60億ドル(約9,036億8,634万円)が計上されている。
これにより、技術企業はAIの発展のためにデータセンターやインフラの構築を迅速に進めることが可能になるよう、許認可の簡素化、電力網の整備、半導体製造の復活、熟練人材の育成などが盛り込まれている。
特に、本行動計画は同盟国に「米国製AIの優先使用」を明記しており、韓国を含む各国のAIエコシステムの安全保障戦略にも影響を及ぼすとみられる。行政命令には「連邦機関が導入するAIシステムは、米国で開発され、米国内で運用されるモデルを優先的に使用しなければならない」という条項が追加された。教育、国防、保健など公共分野全般において外国製AIモデルを完全に排除する方針は、トランプ政権の「米国製造業の復活」戦略とも一線を画さない。
さらに、トランプ政権は「フルスタックAI輸出プログラム」も並行して推進する。これは、AI半導体からモデル、運用インフラ、セキュリティシステムまでを含むパッケージを友好国に輸出する戦略であり、グローバルなAIエコシステムの主導権を米国中心に再編しようとする意図が込められている。今後、AI関連の輸出や国際協力がすべて米国製モデルを軸に再編される可能性が高まる。
トランプ政権はさらに一歩踏み込み、連邦政府と協力する企業に対して「ウォーク」(進歩主義な行動主義)関連のイデオロギー中立性の維持を求めている。米企業にとって、AI行動計画は規制緩和による革新促進に寄与する一方で、「諸刃の剣」となる可能性も指摘されている。
AI革命が今後の米中関係を再編するとの見方が強まる中、オープンAIのサム・アルトマンCEOは「民主的AIが権威主義的AIに勝利すべきだ」と述べた。両国の政府や企業間のイデオロギー競争を超え、独自の立場を確立する必要がある韓国の企業や政府も、これらの言葉を肝に銘じるべきであろう。
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