
米国永住権を持つ韓国人博士課程学生が空港で拘束され、1週間以上も椅子で寝起きした末に、アリゾナ州の不法移民用収容所へ移送されていたことが判明した。
拘束されたのはテキサスA&M大学でライム病ワクチンの研究に従事していた40歳のキム・テフン氏(通称ウィル・キム)。7月21日、韓国での弟の結婚式から戻った際、サンフランシスコ国際空港で移民当局により突然拘束された。同氏は米国に5歳で移住し、約35年間にわたって合法的に滞在してきた永住権保持者だった。
しかし家族によれば、拘束理由の説明は一切なく、連絡も取れない状況が続いた。唯一の通話は拘束直後に母親と行った一度だけで、その後は弁護士との接見も遮断されたまま。『ワシントン・ポスト』紙がこの事態を報じたのは7月29日のことだった。
同氏の代理人であるカル・クルス弁護士は、31日の記者会見で「すでにアリゾナ州の移民拘置施設に移送され、強制退去手続きが進んでいる」と明らかにした。一方で、まだ直接面会はできておらず、具体的な拘束理由も開示されていないと語った。
当局者の中には、キム氏が2011年に違法薬物所持容疑で起訴された過去を問題視している可能性があるとの見方もある。だがこの件は、社会奉仕を含む条件を履行した上で裁判所により記録の非公開が認められたもので、前歴が障害となる事案ではなかった。
クルス弁護士は「空港での長期拘束は正当な手続きと人権を完全に踏みにじる行為だ」と批判。「CBP(米国税関・国境警備局)職員は捜査官でも裁判官でもなく、空港は収容施設ではない」と強く非難した。
同氏によると、キム氏は日中、窓のない狭い部屋で何度も「二次審査」を受け、夜間は別の部屋の椅子で睡眠を取らされたという。食事はすべて空港内の売店から自腹で購入せざるを得なかった。弁護士との接見も拒否され、CBP職員は「憲法修正第5・6条は適用されない」とまで発言したとされる。
米国では現在、トランプ政権が復帰して以降、不法移民の逮捕と即時送還を強化する中で、永住権保持者や市民権者、さらには一時滞在者でさえも空港で突然拘束されるケースが急増している。一部では、かつての軽微な違反が理由で国外追放となる事例も報告されている。
キム氏の母親であるイ・ヘフン氏(通称シャロン・リー)は、記者団との通訳を介した会話で「息子は喘息の持病がある。今も医療措置を受けられているのか心配で仕方がない」と語った。
WPによれば、両親が1980年代にビジネスビザで渡米し、その後に市民権を取得していたが、当時すでに成人していたキム氏には自動的な市民権付与が認められなかったという。
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