
米国のドナルド・トランプ大統領が中国を相手に繰り広げた貿易戦争で、中国が勝利していると米紙ワシントン・ポスト(WP)が4日(現地時間)に報じた。WPのコラムニスト、マックス・ブート氏は同日のコラムで、様々な経済指標などから中国の優位性は否定できないと指摘した。以下はコラムの要約である。
中国経済は今年上半期に平均5.3%成長したのに対し、米国はわずか1.25%の成長にとどまった。また、ほとんどの国が米国の貿易圧力に屈したが、中国は屈しなかった。4月に中国に145%の関税が課されると、中国は125%の関税で対抗し、レアアースの輸出制限で圧力をかけた。トランプ大統領は譲歩し、関税を30%に引き下げ、中国も10%に引き下げた。その後、何度も交渉が行われたが、関税は凍結されたままだ。
結局、米国は世界市場へのダンピング(不当廉売)や知的財産権の侵害など、様々な違反行為を行ってきた中国に対して抱えていた不満に対し、何の措置も取れなかった。特に中国に対する先端技術の輸出管理は実質的に中断された。先月、米政府は軍民両用のエヌビディア(NVIDIA)製AIチップ「H20」の中国への販売を承認した。
また、中国の反対により台湾総統と国防長官の訪米も阻止された。北京に対して宥和的な態度を取るトランプ大統領は、アジア太平洋の同盟国に対しては気まぐれな関税の脅しをかけている。先週、インドに25%の関税を課すと発表した後、ロシア産の石油・ガス輸入に関する追加措置も予告した。米国の歴代政権がインドを米国側に引き寄せるために費やしてきた努力が水泡に帰す恐れがある。
トランプ大統領と貿易合意を結んだ国々は、自国の状況がさらに悪化する可能性があったことを知って安堵している。しかし、トランプ大統領の強引な交渉は後に傷跡を残す。日本の元通商官僚は米国との合意を「屈辱的」と評し、またある日本の経済学者は「日本にとって、全く受け入れられない結果だ」と述べた。中国を牽制しようとする米国にとって、同盟国をこのように扱うのは賢明とは言えない。
より広い視点で見れば、トランプ大統領は米国の外交、対外援助、科学研究投資の縮小を通じて中国の台頭を後押ししている。マルコ・ルビオ米国務長官が、中国の南シナ海進出に対応する外交戦略を調整していた米国務省の職員を解雇した。トランプ大統領が「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」を閉鎖しようとする試みも、中国への贈り物である。インドネシアからナイジェリアに至るまで、中国の国営メディアがVOAの抜けた穴を埋めている。
さらに、トランプ大統領が世界保健機関(WHO)と国連教育科学文化機関(UNESCO)からの脱退を決定したことも、これら国際機関内で中国が影響力を拡大する機会を与えた。加えて、トランプ大統領は米連邦政府の科学研究支援を30%以上削減し、外国人学生の米国大学入学を困難にする計画を進めている。中国が先端研究開発に数十億ドルを追加投資している時期に、こうした動きが行われている。
中国はすでにバッテリー、太陽光パネル、電気自動車、ドローン(無人機)、高性能光通信システム、機械学習、高性能コンピューティングなど、ほとんどの先端技術分野で米国を凌駕している。トランプ大統領の関税政策はこの流れを逆転させる助けにはならず、R&D予算の削減と外国人学生規制はむしろこの傾向を加速させるだけである。
中国の弱点は、長らくその攻撃的な態度と他国に対する軽視から生じる警戒心にあった。しかし、今や米国が中国のように振る舞っており、その結果、国際社会からの評価においても代償を払っている。ピュー研究所(ピュー・リサーチ・センター)が最近、24か国を対象に実施した調査によれば、「過去1年間で米国に対する認識が大きく否定的に変化し、一方で中国に対する認識はやや肯定的に変化した」とされる。
トランプ大統領の関税引き上げ、予算削減、移民制限は米国を弱体化させ、結果的に米国の主要な競争相手である中国を意図せず強化している。
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