中国企業がグローバルサプライチェーン戦略の再編を競っている。ドナルド・トランプ米大統領の関税攻撃により、東南アジア諸国の関税が引き上げられ、これまでサプライチェーン戦略の要であった「チャイナプラスワン」が根底から揺らいでいるためだ。対中関税を回避するために東南アジアへ生産拠点を大規模に移転したが、これらの企業が中国回帰の動きを見せ始めている。
1日、トランプ大統領は東南アジア諸国に15~40%の新たな関税を課した。中国の代替生産拠点として注目されていたベトナムとインドには、それぞれ20%、25%の関税が課された。カンボジア、インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピンには19%、ミャンマー、ラオスには40%の高率関税が適用された。

さらに、中国製品が第三国を経由して米国に入る迂回輸出(トランシップ)には、40%の高関税が追加で課されることになった。このため、中国企業が活用してきたチャイナプラスワン戦略の有効性が急速に失われつつある。中国企業は米国の対中関税を回避するために、中国以外の国に生産・供給拠点を設け、リスクを分散してきた。
専門家の間では、対中関税と東南アジア諸国の関税の差が10%前後であれば、物流の効率性、柔軟性、コストの観点から既存の中国の生産網を維持する方が有利だとの見方が出ている。中国に対する関税は、トランプ大統領の最終承認が遅れているものの、当面は現在の30%程度が維持される可能性が高い。
中国企業は迅速に既存の生産拠点を移転する戦略を再評価し、新たな計画を立てている。フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、カンボジアやベトナムに生産工場を持つ衣料品、靴、玩具、文房具などの多くの中国製造企業が中国への工場再移転を検討しているという。
中国のある靴メーカーの関係者は「カンボジアに生産工場があるが、米国のトランシップ関税の影響で顧客が発注をためらっている」と述べ、「多くの米国の顧客が中国製品の購入を控え、様子見の姿勢を取っている」と語った。
すでにカンボジアに主力生産施設を移転したある中国の照明メーカーは、中国と東南アジアの現地生産コストの差が大幅に縮小し、逆にベトナムの生産業者との競争が激化しているため、中国での生産比率を拡大しているという。
中国広東省の東莞市でおもちゃの生産工場を4つ運営する「東莞兆豊玩具貿易有限公司(Dongguan Zhaofeng Toy Trading Co., Ltd.)」はFTに「多くの競合がベトナムに生産工場を設立したが、後悔している」と述べ、「不動産価格の上昇、労働効率の低下、関税の引き上げなどでコストが過去よりもはるかに増加した」と語った。そして「低価格の中国製品に対する関税による追加負担は微々たるもので、むしろ新たな関税状況において中国が優位になった側面がある」と付け加えた。
チャイナプラスワン戦略を好んでいたグローバル企業も、中国回帰の選択肢を検討し始めている。米国のある家庭用品メーカーは今年、生産拠点をカンボジアに移転した。しかし、米中関税交渉の動向を見守りながら再び中国での生産を検討する計画だ。カンボジアに移転する前は中国で生産していたが、移転過程で柔軟性、効率性、物流の利便性が低下したという判断からだ。関税の優位性が消失するなら、あえてカンボジア生産にこだわる必要はないとの考えだ。
世界最大規模のスポーツ用品小売業者の一つであるインタースポーツは、主要生産拠点を中国に移す案を検討中だ。昨年14億ユーロ(約2,389億2,725万円)の売上を記録した自社ブランド製品を中国からより多く調達する方針だ。インタースポーツは中国、バングラデシュ、ベトナム、カンボジアなどで製品を生産している。中国は依然として余剰生産能力があるが、ベトナムやバングラデシュでは工場間の競争が激化しているとインタースポーツは説明している。
オックスフォード・エコノミクスのルイス・ルー首席エコノミストは「チャイナプラスワン戦略はすでに深刻な圧力に直面している」と述べ、「一部の企業はさらに遠隔地への移転を考えるかもしれないが、多くの場合、中国に戻る可能性が高い」と指摘した。
チャイナプラスワン戦略とは、米中貿易戦争の激化に伴い、対中関税回避を目的として中国以外の国に生産・供給拠点を確保し、サプライチェーンリスクを分散する戦略である。
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