
ドナルド・トランプ米大統領が各国に対して課す「相互関税」が、7日午前0時1分(現地時間)から本格的に施行される。これにより、これまで関税撤廃を柱としてきた自由貿易体制を基盤とする世界の貿易秩序は、大きな転換点を迎えるとみられている。
トランプ大統領は今年1月20日の就任直後から、公約に掲げていた高関税政策の実行に着手した。最初の対象となったのは、米国と国境を接する最大の貿易相手国であるメキシコとカナダ、そして最大の戦略的競争相手である中国だった。
4月2日には、貿易不均衡の是正を名目に、57の主要貿易地域に対して基本関税10%に国別の上乗せ関税を加えた「相互関税」という強硬措置を発表。そのほかの国々については、一律で10%の基本関税を課すと一方的に宣言した。
これに対し、34%の関税率を通告された中国が強く反発すると、トランプ政権は突然態度を軟化させ、中国を除く他の対象国に対しては90日間の関税猶予を設け、個別に交渉を行ったうえで最終的な関税率を決定すると発表した。
これを受けて、英国(10%)やベトナム(20%)に続き、フィリピン(19%)、インドネシア(19%)、日本(15%)、EU(15%)、韓国(15%)などが相次いで米国との貿易合意を締結した。
トランプ大統領は、こうした関税政策が各国からの対米投資を呼び込み、米国の製造業の復活や雇用創出、貿易赤字の解消といった効果を生み出すとの強気の見通しを示している。
大統領は先月30日、ホワイトハウスで記者団に対し、「関税交渉によって文字通り数兆ドル(数百兆円)もの利益を米国にもたらしている」と豪語した。
しかし、トランプ大統領の関税政策には潜在的な副作用があるとの懸念も根強い。
『ニューヨーク・タイムズ(NYT)』は先月31日の記事で、「相互関税の発効によって輸入業者に課される関税が、米国内企業や消費者に価格上昇リスクをもたらす」と警鐘を鳴らした。
また、『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』は、「米企業は現時点では関税によるコスト増加を吸収しているものの、一部は間もなくその負担を消費者価格に転嫁するだろう」と指摘している。
さらに、米国の保護主義的な姿勢が不確実性の増大を招き、世界的な投資の冷え込みやサプライチェーンの再編を引き起こすことで、グローバル経済の成長に悪影響を及ぼす可能性もある。
米シンクタンクのピーターソン国際経済研究所(PIIE)は、最近の報告書で「関税は各国の対応次第で、米国および世界の経済成長率を大きく低下させ、多くの国でインフレを加速させる恐れがある」との見通しを示している。
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