米国政府が国内半導体大手インテルの株式約10%を取得し、筆頭株主となった。補助金支給の対価として株式を受け取ったもので、ドナルド・トランプ大統領が掲げる「半導体国家主義」が現実のものとなった形だ。大統領は「こうした取引をさらに進める」と強調しており、発足後に追加投資計画を示していないサムスン電子やSKハイニックスにも影響が及ぶとの懸念が広がっている。
インテル株式10%取得で合意

トランプ大統領は22日、自身のSNSで「米国がインテル株式の10%を完全に所有し、支配することになった」と表明した。これにより、米資産運用大手ブラックロック(保有比率8.9%)を上回り、米政府が筆頭株主となった。大統領は「リップ・ブー・タンCEOと直接交渉した。米国は一切の支払いをしておらず、現在の市場価値は110億ドル(約1兆6,200億円)に上る」と述べ、今回の合意が米国の半導体産業の将来にとって重要な決定だと強調した。
米政府によるインテル株式の取得は、半導体支援法(CHIPS法)に基づく補助金の対価だ。インテルの発表によれば、米政府は同社普通株4億3,300万株を1株20.47ドル(約3,016円)で取得する契約を結んだ。総額は89億ドル(約1兆3,100億円)で、同日の終値(24.8ドル=約3,655円)を約17%下回る水準となる。取得株式は全体の9.9%に相当し、取引日時は公表されていない。
買収資金は、未払いの半導体補助金57億ドル(約8,400億円)と、国防総省による半導体安全保障プロジェクト向け支援金32億ドル(約4,700億円)で充当する。すでに支給済みの22億ドル(約3,200億円)を合わせると、米政府の投資総額は111億ドル(約1兆6,400億円)に達する。
ハワード・ラトニック商務長官は「米政府が経営に干渉することはない」と説明した。『ロイター通信』によると、株式は「受動的保有」として扱われ、取締役会への参加や経営権限は伴わないという。議案については原則として賛成票を投じる方針で合意された。
経営難のインテル、再建に期待
市場では、今回の資本注入を受けて業績不振が続くインテルの再建への期待が高まっている。『ブルームバーグ』は「新規資金は成長見通しを改善し、知的財産や技術開発の協力機会を広げる可能性がある」と指摘した。この日、ナスダック市場でインテル株は前日比5.53%高で取引を終えた。
政府は議決権を持たないものの、筆頭株主としての存在感を示すことで市場の不安を和らげ、顧客獲得にも有利に働いたとみられる。トランプ政権が他の技術企業に対し、インテル製半導体の購入を迫る可能性があるためだ。投資会社シノバス・トラストのシニアポートフォリオマネジャー、ダニエル・モーガン氏は「トランプ大統領が一種の営業担当の役割を担っているようなものだ」と述べた。
ただし、インテルには競合他社との技術格差を縮める努力が不可欠だとの見方も出ている。
韓国半導体企業の株式も狙うのか
トランプ大統領は今後も同様の「政府による株式取得」を拡大する姿勢を示している。同日、国際サッカー連盟(FIFA)の北中米ワールドカップ抽選イベントに出席した大統領は「こうした取引をさらに進める」と改めて言及した。
このため、サムスン電子やSKハイニックスなど、米政府から補助金を受け取る韓国の半導体メーカーに対しても株式取得が迫られるのではないかとの懸念が広がっている。半導体支援法に基づき、サムスン電子は47億4,500万ドル(約7,000億円)、SKハイニックスは4億5,800万ドル(約675億円)を受給する予定だ。仮にトランプ政権が補助金と同額の株式を求めた場合、サムスン電子の持ち株比率は約1.6%となり、イ・ジェヨン会長の保有分(1.65%)に匹敵する水準となる。
もっとも、外国企業にも同様の措置が及ぶかは不透明だ。『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』は「追加投資を約束した企業については、米政府が株式取得を求める予定はない」と報じた。実際、台湾TSMCは1,000億ドル(約14兆7,350億円)、米マイクロンは300億ドル(約4兆4,200億円)の追加投資を公表している。一方、サムスン電子とSKハイニックスは追加投資計画をまだ示していない。サムスン電子は25日に予定される米韓首脳会談で新規投資を発表する可能性がある。
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