イスラエル空爆でフーシ派首相死亡 報復宣言も
現地報道「内閣全員死亡の可能性」
中東情勢の緊張、再び深刻化

イエメンの親イラン系武装勢力フーシ派のアハメド・アラハウィ首相を含む多数の幹部が、イスラエル軍による精密空爆で死亡したことを、双方が先月30日に公式に確認した。フーシ派がイスラエルへの報復を誓ったことで、中東情勢の緊張は再び高まっている。
ロイター通信などによると、フーシ派最高政治評議会は声明を発表し、アラハウィ首相と閣僚らが同28日、首都サナアで実施されたイスラエル軍の標的空爆により死亡したと明らかにした。アラハウィ首相は、ガザ紛争開始以降の攻撃で命を落としたフーシ派最高位の人物となった。当時、彼らはフーシ派指導者アブドルマリク・アル・フーシ氏の演説を聴くために一堂に会していたとされる。
イスラエル国防軍も作戦の成果を認め、フーシ派の政治・軍事指導部の主要人物を排除したと発表した。イスラエルのチャンネル12は情報当局の評価を引用し、首相を含む閣僚が全員死亡した可能性が高いと報じている。
アラハウィ首相は2023年8月に就任したが、実質的な権限を持たない名目上の存在と見なされていた。イエメン南部アビヤン州出身で、フーシ派が支配できていない地域から支持を得るための象徴的役割を担っていたとされる。政権を事実上主導してきたムハンマド・アフマド・マフタフ第一副首相が首相代行に指名された。
フーシ派は、2023年10月7日のハマスによるイスラエル南部攻撃の1か月後からイスラエルや海上交通路への攻撃を開始した。2024年7月にはテルアビブで民間人1人が死亡し、複数の負傷者が出る攻撃を実施。このためイスラエルは1800キロ離れたサナアなどフーシ派拠点に計16回の空爆を行った。直近の28日の空爆で内閣の大半が死亡した可能性が浮上し、イスラエルは改めて情報力の高さを誇示した形だ。
イスラエルのカッツ国防相は30日、「前例のない打撃を与えた今回の作戦は、単なる序章にすぎない」と述べ、追加攻撃の意志を示した。フーシ派も声明でイスラエルへの報復を誓った。
一方、米国とイスラエルが情報力を背景に中東で急襲的な作戦を展開する頻度が増しているとの指摘もある。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は30日、今年6月に米国がイラン核施設への空爆を指示した際、中東の米大使館には事前に何の通達もなく、友好国からの問い合わせに対応できず混乱が生じたと報道した。また、ドナルド・トランプ米大統領が国家安全保障会議(NSC)ではなく、側近グループの助言だけで意思決定を行っているとの批判も出ている。
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