
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、西側の微妙な標的に次々と攻撃を仕掛け、米国と欧州の対応意志を試していると、米ニューヨーク・タイムズ(NYT)が11日(現地時間)に報じた。
ウクライナ西部の米国工場、欧州の外交団体2か所、そして首都キーウにあるウクライナ政府中枢の建物、さらに今やポーランドにも攻撃を続けている。これらは、過去3週間にわたりロシアがドローン(無人機)とミサイルで攻撃した標的だ。その頂点は、10日未明、北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるポーランド領空に飛来したドローン群による一斉攻撃であった。
現在、ロシアは西側のレッドラインを徐々に越えながら反応を探り、段階的にエスカレートさせることで西側の対応レベルを低下させ、同時に撤退の余地を残す形で攻撃を行っている。NATOは、ポーランドに飛来したドローンを戦闘機で撃墜した。これは、ロシアのウクライナ侵攻以来、NATO軍がロシア兵器と直接交戦した初の事例になった。
それにもかかわらず、過去3週間のロシアの攻撃に対し、欧米当局は強い調子の声明以外の措置を講じられず、ポーランド領空を侵犯したロシアがどのような代償を払うかは未だ不透明な状況だ。ウクライナのアンドリー・シビハ外相は、ロシアのドローンによるポーランド攻撃について「プーチン大統領が代償を払わないという姿勢が強まっていることを示す事例だ」と指摘した。
駐ウクライナEU大使カタリナ・マテルノバ氏は、プーチン大統領が「大胆になった」と強調した。彼女がインタビューに応じたキーウ代表部事務所は、2週間前のロシア攻撃で窓ガラスにひびが入ったままだった。マテルノバ大使は、先月プーチン大統領がドナルド・トランプ米大統領との首脳会談後、むしろ攻撃が増加したと指摘した。
専門家らは、ロシアが徐々に挑発しながら西側の防衛意志を試し、撤退の余地を残す形で攻撃を仕掛けていると評価している。先月、ウクライナ西部の米国所有工場がロシアのミサイル攻撃を受け、大きな被害を被った。この工場はコーヒーマシンの製造工場であったが、同じ敷地内の他の施設では軍需品も生産されていた。
また、ウクライナの首都キーウにあるEU代表部と英国の文化交流機関「ブリティッシュ・カウンシル」の窓ガラスを粉砕したロシアのミサイル2発は、外交施設ではなく隣接する建物に命中した。7日未明にウクライナ政府庁舎を攻撃したミサイルについて、キーウ市長は軌道を外れたミサイルの可能性を示唆したが、意図的な攻撃だとする見方も多かった。
欧州軍がウクライナに駐留した場合、攻撃が行われる可能性があると警告する意図があるとの見方が出ている。 10日、ドローン群がポーランド領空に侵犯した際、ロシアの同盟国であるベラルーシが誤って越境したというニュアンスの声明を発表した。
ロシアは欺瞞と否認に長けている。2014年のウクライナ侵攻時、識別マークのない軍服に身を包んだ兵士をマスク着用のままクリミア半島に投入する策略を用いた。粗雑な欺瞞ではあったが、西側は即座に対応できなかった。
このようにロシアは、過去半世紀にわたりほぼすべての海外軍事作戦を、民間人の服装や識別マークのない軍服を着た兵士の投入から開始してきた。1968年のチェコスロバキアにおける「プラハの春」鎮圧から、アフガニスタン、チェチェン、ウクライナ侵攻に至るまで、同様の手法が取られている。2015年、ロシアは中東へ輸送機を送り込み「人道支援物資の空輸」と主張していたが、後にシリアへの軍事介入を認めた。
10日にポーランドにドローン群が侵入した後、駐ポーランド・ロシア臨時代理大使であるアンドレイ・オルダシ氏は、ロシアのタス通信に対し「ドローン群がウクライナから飛来したという事実だけを把握している」と述べた。これに対し、ポーランドのラドスワフ・シコルスキ外相は、SNSの「X(旧Twitter)」に投稿した動画声明で「嘘と否認はソ連式の対応だ」と皮肉を述べた。
米国と欧州の同盟国も、レッドラインを徐々に越え始めた。米国、英国、フランスはウクライナに対し長距離ロケットとミサイルを供与した。当初、米国はロシア領土への攻撃禁止条件を付けることでロシアの反発を和らげようとしたが、後に限定的なロシア領土攻撃を許可した。
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