「米韓ファンド収益の90%を奪う米国…第1次大戦敗戦国ドイツへの要求さながら」
「3,500億ドル投資はすべきでない」ディーン・ベイカー米CEPR主任エコノミストが語る
米市場アクセスのため韓国GDPの20%を放棄…「極めて悪い取引」
トランプ氏が約束を守るか疑問…拠出すればさらに要求も
交渉を引き延ばし、その間に貿易多角化・軍事力強化を進めるべき

ドナルド・トランプ米政権が、韓国の3,500億ドル(約51兆円)規模の対米投資ファンドの収益の90%を米国側が得ると表明したことをめぐり、「勝戦国が敗戦国に突きつけるような無理な要求だ」と米国内の専門家から批判の声が上がっている。
韓国が関税率を10%ポイント下げるために3,500億ドル(約51兆円)を投資するよりも、むしろ打撃を受ける輸出企業を支援した方が良いと主張して注目を集めた米経済政策研究センター(CEPR)のディーン・ベイカー主任エコノミストは15日(現地時間)、韓国『ソウル経済新聞』とのオンラインインタビューで「このような合意は見たことがない」と述べた。そのうえで、「米政府は3,500億ドルの大部分を融資や保証ではなく韓国の財政から拠出するよう望んでおり、利益の90%は米国が取ると発言した」との質問に対し、「3,500億ドルは韓国の国内総生産(GDP)の20%に相当する規模であり、第一次世界大戦後に勝戦国がドイツに課した賠償金と同じことを同盟国に強いている」と批判した。さらに「関税引き下げで米市場へのアクセスをわずかに広げるために、これほど巨額を放棄するのは非常に悪い取引だ」と強調した。ベイカー氏は1999年にCEPRを共同設立し、2008年の世界金融危機を予見したことで知られる著名な経済学者である。
彼は「仮に韓国が3,500億ドルを拠出しても、トランプ大統領はすぐに方針を翻し追加要求をする可能性がある」と警告。「トランプ氏は約束を重く受け止めない」と述べ、EUと15%の関税協定を結んだ直後に、デジタル課税を不服として報復措置を持ち出した事例を挙げた。そのうえで「仮にトランプ氏が約束を守ると確信できても、今回の米韓通商合意は悪い取引であり、しかもトランプ氏が本当に履行するかどうかも保証できない」と語った。
韓国が安全保障を米国に依存しているため譲歩は避けられないとの見方もある。有事に米軍の支援を得るためには、米国の要求を受け入れるしかないとの見方による。しかし、ベイカー氏は「朝鮮半島有事の際、かつての米大統領なら超党派で韓国を支援しただろうが、トランプ時代には無条件の支援を期待すべきではない」と断言。「トランプ氏は中長期ではなく現在の利益だけを徹底的に追求する『米国第一』政策を掲げている以上、全面的支援を当然視してはならない」と一刀両断した。
では解決策は何か。ベイカー氏は「米国と交渉を続けつつ、両国が緊密になっていると語るべきだ」と助言した。3,500億ドルの投資合意を避けながら、代わりに大きな代償を伴わない案件で合意し、最終決着を先送りする戦略を提案した。さらに「トランプ大統領を持ち上げ関係を維持する必要があり、公然たる衝突は絶対に避けるべきだ。合意が明示的に破棄される事態も避けるべきだ」と強調。「その間に米市場への依存度を下げ、より強力な軍事力を整えるべきだ」と述べ、「何よりも米国に韓国の戦略を察知されてはならない」と付け加えた。
最近ジョージア州で発生した多数の韓国人拘束事件についても、「大半が合法的な滞在ビザを持っていたが、移民当局は彼らを逮捕し、犯罪者以下の扱いを受けた。『米国は韓国を尊重せず、我々の思うままに振る舞う』と言わんばかりで、同盟国への侮辱だ」と批判した。
米経済については「徐々に減速している」と評価した。関税が米国民の財布から資金を吸い上げ、経済を緩やかに冷やしていると分析した。さらに「不法移民の強制送還政策で農場では収穫作業ができず作物が腐っている。農業や建設業などで労働力を大幅に失い、長期的な打撃が予想される」と警告した。
またAIバブルについても危機感を示した。ベイカー氏は「1990年代にITバブルの崩壊を予測し、結果的に現実となった。2000年代にも米住宅バブルの崩壊を警告し、これも時間はかかったが実際に起きた。今回も同じ状況だ」と指摘した。「株価収益率(PER)は20倍でも高いとされるが、マイクロソフトは実に38倍だ。6カ月か2年かは分からないが、いずれ崩壊するだろう。AIは経済を牽引する原動力であるため、それが崩れれば深刻な景気後退を招く」と語った。
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