予備金確保の対策発表…制裁への対応強化

ウクライナ戦争が4年目に入るなか、ロシア政府が財政赤字に苦しむ状況で、ウラジーミル・プーチン露大統領が一部増税の可能性を示唆したと、ロイター通信が18日(現地時間)に報じた。
来年度予算案の提出は29日に予定されている。
ロイターによると、ロシア政府は財政赤字を制御可能な水準に抑え、財政準備基金を維持するため、付加価値税の引き上げを検討しているという。
プーチン大統領はこの日、議会の各会派指導者らと会談し、贅沢品への課税や株式配当への課税強化について「戦時下では合理的と言える」と述べつつ、慎重さが必要だと強調した。その他の税については言及しなかった。
また、プーチン大統領は「増税問題を政治化する意図はない」としながらも、米国がベトナム戦争や朝鮮戦争の際に高所得層への課税を強化した例を引き合いに出した。ロシアでは2021年に累進所得税制度が導入され、今年は高所得者層への税率を引き上げている。
一方、財務省は株式配当課税の強化は投資心理を冷え込ませる恐れがあるとの見解を示してきた。
プーチン大統領は、2025年に予定される増税以降、2030年までは大きな税制改正は行わないと約束しており、今月5日には政府に対し「増税ではなく生産性向上によって歳入を拡大すべきだ」と指示していた。
18日にロシア政府が発表した措置の中には、原油価格の変動や西側諸国によるエネルギー制裁が予算に与える影響を最小化する狙いも含まれる。具体的には、財政準備金の積み立てを確保するため、基準原油価格を引き下げ、これを上回った分の収益を準備金に回す仕組みを来年から導入する。
アントン・シルアノフ財務相は「財政の回復力を高め、石油・ガス収入への依存度を下げたい」と説明した。ロイターの試算では、先月のロシアの石油・ガス収入は前年同月比23%減となる見通しで、価格下落とルーブル高が要因だという。
プーチン大統領は今週、主要閣僚らと予算問題を協議する中で、経済成長の減速に不満を表明した。ロシアの成長率は昨年の4.3%から今年は1%に鈍化する見通しだ。
ロシアは2004年にアレクセイ・クドリン財務相が導入した「予算規則」と呼ばれる制度によって、基準価格を上回る原油収入を準備金に回す仕組みを持っていた。しかしウクライナ戦争が始まった2022年以降は機能していない。
シルアノフ財務相は、新たな措置により2025年1月から8月の国家予算に占めるエネルギー収入の割合を25%から22%に引き下げ、予算の安定性を強化できると説明した。
さらに、基準原油価格の現在1バレル当たり60ドル(約8,871円)を毎年1ドル(約147円)ずつ引き下げ、2030年には55ドル(約8,132円)とする方針を示した。
欧州連合(EU)は2022年12月にロシア産原油の価格上限を導入し、違反した企業や機関に制裁を科している。今年7月には国際原油価格の安定を受け、ロシア産原油の上限を60ドルから47.6ドル(約7,037円)に引き下げ、9月初旬から適用を開始した。
ロシア政府が活用可能な財政準備金は現在約4兆ルーブル(約7兆1,037億4,150万円)で、今年はそのうち4,470億ルーブル(約7,938億4,311万円)を取り崩し、GDP比1.7%を超えると見込まれる財政赤字の一部を補填する計画だという。
シルアノフ財務相は、2026年予算でウラル原油の平均価格を1バレル当たり59ドル(約8,721円)に想定していると述べた。ロイターは「基準価格が現行のままなら準備金の積み立てはできない」という意味合いを持つ発言だと伝えている。
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