
ロシアの激しい攻勢の中、ウクライナ軍は最近北東部で稀な小規模勝利を収めたと伝えられており、今後の停戦交渉への影響が注目されている。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、ウクライナの僅かな勝利が「ロシアに領土を譲り、停戦交渉に応じるべきだ」というロシアの主張への反論材料になり得ると指摘している。
戦況追跡サイト「DeepStateMap」によると、ウクライナ北東部のスームィ州において、ウクライナ軍はキンドラチウカなど小村2か所を奪還した後、現在ロシアが占領している他の村へ進撃中という。ウクライナ軍は、ドローン(無人機)攻撃や小規模歩兵部隊の襲撃などの常套作戦に加え、精鋭空挺部隊も投入し、この小さいながらも貴重な勝利を収めた。
DeepStateMapの情報によると、ロシアは今年の5月以降、毎月440〜556㎢のウクライナ領を占領しているという。ウクライナ軍の指揮官たちも、これまでロシアに比べ兵力と火力で劣勢であることを認めてきた。さらにロシアは停戦交渉において、占領したスームィとハルキウの領土返還と引き換えに、ウクライナにドネツクやルハーンシクなど、より広大な領土の一部割譲を要求している。特に、ロシアはウクライナ軍がロシア軍の進撃を阻止できないと主張し、領土放棄を伴っても即時の和平協定締結を迫っている。
こうした中、NYTはウクライナの小規模な戦果がロシア側の主張への反論になるのみならず、停戦交渉におけるロシアの交渉力を弱める可能性があると分析している。ウクライナのシンクタンク「トランスアトランティック・ダイアログ・センター(TDC)」の所長、マクシム・スクリプチェンコ氏(Maksym Skrypchenko)は、スームィ地域の一部奪還はモスクワの交渉力弱体化を狙った一環であり、「領土を取り戻せるのであれば、なぜ交換する必要があるのか」と反論した。
ただし、ロシアに比べ劣勢とされるウクライナの軍事力に対する疑念は根強く、ロシア軍が強大な火力をもって執拗に攻勢を続けている点が今後の鍵になりそうだ。ロシアはこれまでスームィ地域を絶え間なく爆撃しており、ウクライナが最近奪還した村々は原形を留めないほど破壊されている。同紙によれば、この地域で作戦中のウクライナ軍第225連隊長は、ロシア軍が「過去2年間、数的優位を保ってきた」と認めたという。
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