米、H-1Bビザで「高所得者」優遇へ 格差拡大に懸念
賃金水準ごとに4グループに分類
抽選回数を1~4回に差別化
スタートアップの人材確保に打撃の恐れ

ドナルド・トランプ前政権の米国が、専門職ビザ(H-1B)の発給で高所得・高スキルの労働者を優遇する制度改革を進めている。米国はH-1Bビザの発給手数料を1人当たり10万ドル(約1,500万円)に大幅引き上げる方針で、大企業とスタートアップ間で格差が拡大するとの懸念が出ている。
米国土安全保障省は23日(現地時間)、H-1Bビザ発給規則について、賃金水準に応じた重み付けを行い、高給の労働者により多くの抽選機会を与える暫定改正案を連邦官報に掲載した。現行制度では年間発給数が8万5,000件に制限されており、申請者が多数の場合は無作為抽選となっている。
暫定規則によれば、労働者は賃金水準に応じて4グループに分類される。最高区分(16万2,528ドル=約2,420万円以上)の申請者には4回の抽選機会が与えられる一方、最低区分(8万5,006ドル=約1,260万円以下)の申請者は1回のみとなる。
この措置が実施されれば、大学・大学院卒業後に新たな就職を狙う外国人は相対的に低賃金であるため、ビザ取得の機会が大幅に減少する見込みだ。トランプ前大統領は第1期政権でも、賃金水準に連動して特定職種に限定してH-1Bビザを発給する改革を試みたが、バイデン政権発足により実現しなかった。
ニューヨーク・タイムズは、H-1B発給手数料の大幅引き上げにより、大手テクノロジー企業は負担能力があるものの、スタートアップは資金調達の制約から人材獲得に苦戦する可能性があると指摘。「この変更が米国のテクノロジー・エコシステムの核心に打撃を与える可能性がある」と分析している。
一方、ウォール・ストリート・ジャーナルは、議会に提出された政府報告書に基づき、2025会計年度(2024年10月〜2025年9月)のH-1Bビザ発給数が最も多い企業はアマゾン(1万4,667件)で、インドのIT大手タタ・コンサルタンシー・サービス(5,586件)、マイクロソフト(5,189件)が続いていると報じた。
コメント0