
シリアのアフマド・シャラア臨時大統領は、イスラエルがイラン侵攻を目的にシリア領空の航路を開放するよう求めたことについて「危険を招く」と強い反発を示した。
AFPとロイター通信の報道によると、米ニューヨークで23日(現地時間)に開かれた中東研究所(MEI)の行事に出席したシャラア臨時大統領は、「イスラエルが交渉を遅らせ、我々の領空を侵犯し、領土に侵入していることは、多くの危険を引き起こしている」と述べた。その上で「イスラエルとの問題をつくっているのは我々ではない。むしろ我々こそがイスラエルを恐れている」と語った。
イスラエルはこれに先立ち、シリア領空をイランへの航路として開放することや、シリア・ゴラン高原のヘルモン山頂にある基地にイスラエル軍を駐留させ続けることなどを盛り込んだ安保協定案を提示していた。
昨年12月、アサド政権が崩壊し14年間続いた内戦が終結すると、イスラエルは国連が管理するゴラン高原の緩衝地帯に侵入し、9カ所に基地を設置してシリアを攻撃してきた。シャラア臨時大統領によると、その後イスラエルはシリアに対して空爆を1,000回以上、地上侵攻を400回以上行ったという。
現在、シリアとイスラエルは緩衝地帯からのイスラエル軍撤収や、シリア国境地域に非武装地帯を設けることを柱とした安保協定を協議している。だがシャラア臨時大統領は、自国領土の分割要求を断固拒否した。「シリア分割の議論は、イラクとトルコにまで悪影響を及ぼすだろう」と警告した。
シリア北東部を掌握するクルド人勢力は国家への編入を拒み、クルド人の権利を認める新憲法を要求している。もしクルド人が領土を分割して独立国家を樹立すれば、イラクやトルコのクルド人も同様の要求を突きつけ、紛争を引き起こす可能性が高い。イスラエルも今年初め、シリアを民族・宗派ごとの自治区で構成する連邦国家に転換するよう欧州連合(EU)に働きかけていた。
ロイター通信は「イスラエルはシャラア臨時大統領の過去のジハード勢力との関係を指摘し、イスラム主義が主導するシリア政府に敵意を示しつつ、米国にシリアの弱体化と分権化の維持を働きかけてきた」と報じた。

トム・バラック米国特使(駐トルコ米国大使)は同日、国連総会の会場で記者団に対し、ドナルド・トランプ米大統領が国連総会の期間中にイスラエルとシリアの安保協定を締結し発表する計画だったが、協議が遅れていると明らかにした。バラック特使は「ユダヤ教の新年祭ロシュ・ハシャナと重なり、交渉を十分に進展させることができなかった」と説明し、「関係するすべての当事者が誠実に取り組んでいる」と述べた。
24日午前、シャラア臨時大統領は国連総会で演説する予定であり、シリア大統領の総会演説は1967年以来58年ぶりとなる。
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