NYT調査で指摘 ―「理由のない緊急命令が司法への信頼低下を招いている」

米国の連邦判事らが、ドナルド・トランプ政権の政策において、連邦最高裁が緊急命令権を乱用していると懸念を示している。
12日(現地時間)、ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、全米の連邦判事を対象に実施した調査結果を報じた。それによると、「トランプ大統領の復帰以降、最高裁が緊急命令権を適切に行使している」との設問に対し、47人が否定的な回答を示し、賛同したのは12人、中立が6人だったという。
調査に回答した65人のうち、37人は民主党政権下で、28人は共和党政権下(トランプ大統領を含む)で任命されている。
緊急命令権とは、本判決前に下級審の判断の効力を停止または維持する措置であり、書面提出や口頭弁論を経ずに処理される手続きである。
第2次トランプ政権発足後、保守派優位に再編された最高裁が、明確な理由を示さずに行政政策関連の緊急命令権を多用し、下級審の決定を覆す事例が増加している。この結果、司法制度への信頼が揺らいでいるとの指摘が出ている。
匿名で取材に応じた判事らは、緊急命令権の行使を「神秘的」「過度に直接的」「信じがたいほど士気を下げ、不安を招く」「地方裁判所への侮辱」と批判した。
ある判事は、自身の管轄と最高裁の関係を「戦場」と表現し、別の判事は「司法の危機に直面している」と憂慮した。
実際、最高裁はトランプ政権の政策に関連して少なくとも20件の緊急命令権を発動しており、そのうち7件では理由を明示していない。
NYTは、緊急命令権は一時的な措置に過ぎないものの、実際には数万人の移民の強制送還、トランスジェンダー軍人の除隊、数千人の公務員解雇、連邦支出削減など、広範な影響を及ぼしたと指摘した。
NYTは、今回の調査回答者が司法界全体の意見を代表するわけではないものの、現職判事らが最高裁の対応に対し公然と懸念を表明するのは極めて異例だと報じた。
ジョージ・H・W・ブッシュ政権で法務省次官補を務めたマイケル・J・ルーティグ元連邦判事は、「多数の現職判事が最高裁について公に意見を表明することは、歴史的にも前例のない重大な出来事だ」と評価した。
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