
ドナルド・トランプ米大統領が、韓国に対し関税引き下げの見返りとして3,500億ドル(約53兆3,557億4,390万円)の対米投資を要求している件について、米国内の有力メディアからも「その資金を一体どう工面するのか」と批判の声が上がっている。さらに、「韓国はむしろその資金を国防費に充てるべきだ」とする主張も出ている。
現在、韓国と米国はワシントンで貿易合意の最終締結に向けた詰めの協議を行っている。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は22日付(現地時間)で、「トランプ大統領の外国人投資基金」と題する社説を掲載。副題には「東京とソウルは信じ難いほどの巨額支援を約束した」と記された。
同紙は「日本との了解覚書(MOU)は詳細を確認するまでは成功に見える」とし、韓国とはまだ交渉中だと説明している。さらに「日本とのMOUには、投資資金が金属、エネルギー、人工知能(AI)、量子コンピューティングなど、経済および国家安全保障に資する分野に使われると明記されている」と伝えた。
しかし、成功に見えるこの交渉結果の内実を検証すると、事実と異なる点も指摘されている。
社説は「TSMCがアリゾナ州に半導体工場を建設するという民間企業の投資とは異なる」とし、「完全に米国政府、つまり大統領の裁量に委ねられた政府間投資だ。議会の承認や予算措置を経ずに運営される、事実上の国家ファンドと言える」と指摘した。
さらに、日米間のMOU内容を詳しく見ると、韓国に先んじ、米国は日本と大枠で関税交渉を妥結し、相互関税を15%に引き下げる代わりに5,500億ドル(約83兆8,533億5,910万円)の対米投資を約束したことも明らかにした。両国が署名したMOUには、該当投資金が米大統領の決定に従い、国家安全保障と経済発展に寄与する分野に充当されるという。
日本が資金を拠出する期限は45日以内とされ、拒否した場合は高率関税が課される可能性もある。さらに、投資による利益が発生してもその利益が日本に還元されるわけではなく、米国と日本は「定められた配当額」に到達するまでのみ利益を分配し、その後は米国側が90%を得る仕組みになっている。
こうした日本との協定を前提に、トランプ大統領は韓国にも3,500億ドルの対米投資金を全額前払いで拠出させるよう要求している。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、米国が要求する韓国の投資規模についても問題提起した。米国の多国籍投資銀行かつ金融サービス会社であるパイパー・サンドラーのアンディ・ラペリエール氏が作成した報告書に基づいている。その報告書では「韓国の対米投資金(3,500億ドル)は、トランプ2期の残りの任期3年間で韓国GDP(国内総生産)の6.5%に相当する規模だ」とし、「日本はMOUに従って毎年1,830億ドル(約27兆8,984億9,704万円)を支出する必要があり、これはGDPの4.4%にあたる。また、日本国際協力銀行(BIC)の現有資産は350億ドル(約5兆3,359億484万円)にすぎない」と分析した。
さらに、米国に3,500億ドルを投資するより、その金を自国の国防費に充てるべきだという提案もなされている。
社説は「むしろ、トランプ大統領が促したように韓国と日本が巨額の対米投資の代わりに、国防支出を増やす方が良いのではないか」と問いかけた上で、両国は米国に2〜3倍規模の投資を約束したが、その資金をどのように調達するつもりなのか」と主張している。
現在、韓国はGDPの2.3%、日本は1.8%を国防費に充てているが、米国防総省は先月、韓国などアジアの同盟国がGDPの5%を国防費に充てるべきだと表明した。
韓国政府は、今月31日に慶州で開催されるアジア太平洋経済協力体(APEC)首脳会議を控え、米国との最終交渉を進めている。
韓国の金容範(キム・ヨンボム)大統領室政策室長と金正官(キム・ジョングァン)産業通商部長官は、同日、ワシントンの米国商務省庁舎で、ハワード・ラトニック商務長官と約2時間の会談を行った。
金室長と金長官が米国を訪れ、ラトニック長官と会談したのは、16日以来6日ぶりとなる。
金室長は会談後、記者団に対し「未解決の懸案について幅広く議論し、一部で進展が見られた」と述べ、「ただし、大きな進展ではない。残る課題は1、2件あり、さらに協議が必要だ」と語った。
「交渉は最終段階に入ったのか」という質問には、「最終段階ではないが、交渉は終わるまで終わったわけではない」と答えた。
ただし、未解決の懸案が何であるか、どの程度進展したのかなどの詳細には触れていない。現在、問題となっている3,500億ドルの対米投資に関連するパッケージ構成案などが議題に上っているとみられる。
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