謎のドローン頻発、ロシアの「ハイブリッド戦」に不安を抱くヨーロッパの空
「欧州の首都」ブリュッセル国際空港が一時閉鎖、ベルギーが緊急安保会議を招集

ヨーロッパ各地の上空で正体不明のドローンが頻繁に出現し、旅客機の運航停止や空港閉鎖が相次いでいる。これにより利用者の不便と不安が広がっている。
ヨーロッパ当局や各国政府は、明確な証拠はないとしてロシアを名指しすることは避けているものの、相次ぐドローン出現が欧州の不安定化を狙ったロシアの「ハイブリッド戦」の一環である可能性を疑っている。
ウクライナ戦争が4年目に入る中、ロシアの脅威はウクライナを越えてヨーロッパの空域にまで拡大しており、ヨーロッパの防空能力が試される事態となっている。
4日には、欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)本部が所在し「欧州の首都」とも呼ばれるベルギー・ブリュッセル国際空港が、正体不明のドローン出現を受けて一時閉鎖された。
ブリュッセル中心部から数キロの距離にあるブリュッセル国際空港では、同日夜にドローンが3回出現したため、午後8時と午後10時の2度にわたり運航を停止した。この影響で到着便24便、出発便16便の計40便が運航中止となり、最大1,000人の乗客が空港内で夜を明かす事態になったと、現地紙ブリュッセル・タイムズが5日に伝えた。
格安航空が多く就航するブリュッセル南部のシャルルロワ空港でも、予防措置として運航を一時停止したとAFP通信は報じた。
ブリュッセル国際空港がドローン脅威によって運営を停止したのは初めてだ。ブリュッセル国際空港の広報担当者は「状況は正常化に向かっており、5日昼までに運航を再開する」と明らかにした。
先週末には、米国の核兵器が配備されているとされるベルギー北東部のクラインブローゲル空軍基地周辺でも謎のドローンが目撃されており、首都空港まで影響が及んだことで、ベルギー首相は緊急安全保障会議を招集したとブリュッセル・タイムズは報じている。
ベルナール・カズヌーヴ内務大臣は「乗客と職員の安全が最優先だ」と述べ「国家的かつ統一的な対応が必要だ」と危機感を示した。
9月から10月にかけては、デンマークのコペンハーゲン、ノルウェーのオスロ、ドイツのミュンヘンとベルリン、スペイン・マヨルカ島の空港など、利用客の多い欧州主要都市でも、正体不明のドローン出現により運航が一時中断された。
また、チェコ、ポーランド、ルーマニアなどロシアに地理的に近い東欧諸国でも、最近になって軍基地周辺で確認されていないドローンの飛来が相次ぎ、各国が戦闘機を緊急発進させるなど警戒態勢を強化している。
9月には、ポーランド領空に20機以上のロシア製ドローンが侵入し、さらにエストニア上空ではロシア戦闘機3機が約12分間飛行するなど、ロシア軍機や無人機がNATO加盟国の領空を露骨に侵犯した事例も確認されている。
これらロシアの関与が明確な事件に続き、ヨーロッパ各地で正体不明のドローン出現が相次ぐ中、欧州各国はその背後にロシアがいる可能性を強く疑っていると、ロイター通信は伝えている。
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、相次ぐドローン出現について「ロシアはヨーロッパに対しハイブリッド戦争を仕掛けており、ヨーロッパに分裂の種をまこうとしていることは明らかだ」と述べ、先月の欧州議会演説でも警戒を呼びかけた。
ハイブリッド戦争とは、敵国の弱体化を狙い、虚偽情報の拡散やサイバー攻撃、軍事行動などを組み合わせて行う戦略的手法を指している。
ベルギーのテオ・フランケン国防大臣も「軍基地周辺で繰り返し目撃されているドローンは、専門家による組織的な作戦行動とみられる」と述べ「彼らはベルギー社会に恐怖を広めようとしている」と警鐘を鳴らした。


















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