
中国の富裕層がアラブ首長国連邦(UAE)のドバイなどでファミリーオフィスを設立し、居住権を確保する動きを強めている。かつて高額資産家の「税務上の避難先」として人気を集めていたシンガポールが規制を強化したことで、代替地としてUAEへの関心が急速に高まっている。
英紙「フィナンシャル・タイムズ(FT)」は9日(現地時間)、超富裕層向けのプライベートバンカーや資産コンサルタントの話として、過去1年間でドバイやアブダビへの移住相談を持ちかける中国人が増えていると報じた。相談内容は、家族や一族の資産を専門的に管理するファミリーオフィスの設立や、市民権・居住権の取得に関するものだという。
専門家によると、UAEの「ゴールデンビザ」は投資家やその家族、一部の高度技能人材に10年間の居住権を付与しており、税制面でも安定的かつ有利な環境が整っていることから、富裕層の注目を集めている。
UAE政府は2019年から、世界中の投資家や人材を呼び込むために長期滞在が可能なゴールデンビザ制度を導入し、投資家資格で同ビザを取得するには、200万ディルハム(約8,400万円)規模の金融・不動産投資を行うか、年間25万ディルハム(約1,050万円)の納税実績を証明する必要がある。
ビザの発給件数も急増している。UAE当局によれば、2022年の発行数は8万件と、前年の4万7,000件から大幅に増加した。ドバイ国際金融センターに登録されているファミリーオフィスの法人数も、2023年の600件から2024年には800件を超え、今年上半期の時点で1,000件を突破している。専門家らは、この増加の多くが中国人個人投資家によるものだと分析している。
背景には、新型コロナウイルス流行期の中国やシンガポールでの厳しいロックダウンが、中東地域への関心を高めたことがあるとみられる。
さらに、シンガポールでは近年、移民政策がより制限的となり、富裕層による居住権や市民権の取得が難しくなっている。中国の犯罪組織と関連したマネーロンダリング事件の発生などで、個人資金の流れへの監視が強化されたことも、シンガポール政府が移民審査を厳格化する要因となっているという。

















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