クルーグマン氏「関税還元は恐ろしい発想」
財政赤字2兆ドル…無責任な財政運営
ドナルド・トランプ米大統領が、関税収入を財源として一部の高所得層を除くすべての国民に1人あたり2,000ドル(約30万8,744円)を支給する方針を打ち出したことに対し、ノーベル経済学賞受賞者でニューヨーク市立大学教授のポール・クルーグマン氏が強く批判した。クルーグマン教授はこの政策を「恐ろしい発想」であり「財政健全性を損なう危険なポピュリズムだ」と指摘したうえで、アメリカ経済の実態についても「米国民の体感景気は急速に悪化している」と分析した。

経済は崩壊寸前ではないが、深刻な兆候
クルーグマン教授は10日(現地時間)、米ブルームバーグTVとのインタビューで「トランプ大統領は『経済は好調』と主張しているが、国民が感じている現実は全く異なる」と語った。

クルーグマン教授は「消費者物価指数(CPI)は依然として前年比3%前後で、米連邦準備制度理事会(FRB)の目標である2%を大きく上回っている。実質賃金の伸びも鈍化し、大規模な解雇の影響で雇用市場も冷え込んでいる」との見方を示した。
また「現在の消費者信頼感指数は、2022年のインフレ期や2008年の金融危機、1980年代のスタグフレーション期よりも低い水準にある」と述べ「国民が経済を極めて悲観的に見ている」と強調した。
さらに「経済が崩壊直前ではないが、明確な警告サインが出ている。若年層の求職者や失業者にとって今は極めて厳しい時期だ」と語った。こうした状況は、最近の連邦政府機関の一部閉鎖(シャットダウン)長期化とも重なり、国民の不安を一層高めているという。
トランプ大統領の2,000ドル関税配当は財政爆弾
トランプ大統領は最近、関税収入を活用して米国民に1人あたり2,000ドルを支給する構想を表明した。これに対し、クルーグマン教授は「財政的に極めて無責任な措置だ」と断じた。

クルーグマン教授は「これは本当に恐ろしい発想だ。歳入が減少し、財政赤字が拡大している中で、関税収入を国民にばらまくのは危険なポピュリズム以外の何ものでもない」と批判した。
さらに「現在、米国の財政赤字は戦争や緊急事態でもないのに2兆ドル(約308兆8,121億3,000万円)規模に達している。この状況で現金給付を行えば、財政健全性は制御不能に陥る」と警鐘を鳴らした。
米国民はすでに「景気悪化体感」を実感
クルーグマン教授は「2008年の金融危機ほどではないにせよ、国民はすでに経済の悪化を肌で感じ始めている」と述べたうえで「現在の状況は構造的不安定と政治的混乱が重なっており、景気後退のリスクを増幅させている」と指摘した。
そして「今求められているのは人気取りの現金給付ではなく、長期的な財政バランスの回復だ」と強調した。














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