ウクライナのドローン攻勢に対抗
ロシア、クルスクで「アルハンゲル」運用テストへ

ロシアが国境地域で、新型無人機迎撃ドローン「アルハンゲル」の運用試験を開始した。「アルハンゲル」は英語で大天使を意味する「アークエンジェル」のロシア語発音である。

クルスクで実戦運用試験…「高価なミサイルでの対応には限界」
米軍事専門メディア「ディフェンス・ブログ」は10日(現地時間)、ウクライナによるドローンの攻撃や偵察がロシア領深部にまで拡大する中、ロシアがクルスク周辺で「アルハンゲル」システムの実戦評価を開始したと報じた。
ディフェンス・ブログは、アルハンゲル・プロジェクトのテレグラム投稿とロシア地方紙「セクンダ」の取材内容を引用し、この試験が低コストで機動性の高い迎撃システムによる防空能力強化の試みであると分析している。
アルハンゲル・プロジェクトは、ロシアのボランティア型ドローンネットワークを率いるミハイル・フィリポフ氏が主導しており、防衛産業大手カラシニコフ社が戦闘型機体の製造を担っている。フィリポフ氏は、クルスク地域に新設された迎撃ドローン運用チームと移動式レーダー部隊を配置し、実戦環境下で試験を進めていると明らかにした。
経済的合理性を重視「安価ドローンに高価兵器では持続不可能」

フィリポフ氏は「アルハンゲルは既存の防空システムを置き換えるのではなく、それを補完・拡張する目的で設計された」と説明し「速度と作戦行動範囲の点で同等機体は存在しない」と述べた。
また「ウクライナ軍が低価格の偵察・攻撃ドローンを連携運用し、防空網の隙を突いている現状では、高額な迎撃ミサイルによる対処は持続不可能だ」と指摘した。

プロジェクト側は敵偵察ドローン1機あたりの価格は40万ルーブル(約76万3,429円)から50万ルーブル(約95万4,287円)と提示した。アルハンゲルの飛行速度は時速約360キロメートルで、敵ドローンの約160キロメートルの2倍に達するとした。
フィリポフ氏は「移動式レーダーチームが標的を探知すると、迎撃ドローンが人口密集地から遠ざけ、安全に撃墜する。偵察ドローンを早期に除去できれば、その後の攻撃そのものを防げる」と語った。
さらに「低コストのドローンに高額兵器で対抗する構造は長期戦では維持できない。戦争の帰趨は、どちらがより早く対ドローン技術を大量配備できるかにかかっている」と強調した。
国境地帯に訓練拠点を拡大…「予備役も防空要員に」
アルハンゲル・プロジェクトは、クルスクを含む国境地域に移動式レーダー部隊と迎撃ドローン運用チームを常時展開し、全国に小規模な防空訓練センターを設置して人材を育成する計画も明らかにしている。
フィリポフ氏によれば「熟練操縦士なら1、2日、初心者でも1週間程度の実習で操作が可能」とし「この訓練を通じて予備役や民間人を現場の防空戦力として活用できる」と述べた。ただし、ここのような計画はプロジェクト側の主張であり、独立した確認はされていない。
「戦闘機にケーブルで縛られたドローン」…専門家は「非現実的な実験」と批判

一方、軍事専門メディア「ザ・ウォーゾーン(TWZ)」は8月、ロシアがアルハンゲル・プロジェクトの一環としてMiG-29戦闘機に迎撃用ドローンをケーブルタイで取り付けた実験映像を公開し「プーチン軍に対し、国内外から嘲笑が相次いだ」と伝えた。
映像では、戦闘機の下部センサーポッドに迎撃用クアッドコプター型ドローンが固定されており、専門家は「この方法ではドローンの発射や制御が困難で、高速飛行中に機体の防御システムを妨害するおそれがある」と指摘している。
TWZによると、映像の撮影時期や場所は確認されておらず、アルハンゲル・プロジェクトとロシア軍の関係性も不明確だという。ただし、アルハンゲル・プロジェクトは2023年以降、民間主導で一人称視点(FPV)ドローンの大量生産を開始しており、ロシア国防省が資金支援している可能性があるという。
アルハンゲル・プロジェクト関係者は「戦闘機と迎撃ドローンを統合すれば、戦闘機が直接ドローンを投下できる」と主張しているが、TWZは「キーウなど主要都市の防空網の密度を考慮すれば、現実的とは言い難い」と評価した。
この一連の動きは、ロシアが宣伝的実験と実戦的戦力化の間で揺れている現状を象徴している。低コストかつ機動的な対ドローン技術の開発は加速しているものの、実際の戦力化には依然として懐疑的な見方が多い。
ウクライナ、ロシア双方がドローン戦力を急速に拡大しており、戦場は探知・追跡・無力化を競うドローン迎撃戦の時代へと突入しつつある。














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