与野党議員、戦争権限決議の採決に踏み切る考えを表明
「議会承認のない軍事行動は、米軍の命を不必要に危険にさらす」

米上院が、ドナルド・トランプ大統領によるベネズエラへの一方的な開戦を阻むため、超党派で動き出した。ロイター通信によると、民主党のティム・ケイン(バージニア州)、チャック・シューマー(ニューヨーク州)、アダム・シフ(カリフォルニア州)各上院議員と、共和党のランド・ポール上院議員(ケンタッキー州)は2日(現地時間)、共同声明を発表し、トランプ政権がベネズエラへの攻撃に踏み切った場合には、直ちに「戦争権限決議」を提出して議会での採決を求める方針を明らかにした。
議員らは、議会の承認を得ない軍事行動は「米軍兵士の命を不必要に危険にさらす、巨大で高くつく過ちだ」と警告した。
戦争権限決議の採決は、大統領の軍事行動を抑え込むために議会が行使できる強力な牽制手段とされる。1973年に制定された戦争権限法に基づき、議会は大統領が承認なしに海外で武力行使に踏み切った場合、決議を通じて部隊の撤退を命じることができる。
この決議は常任委員会での審査を経ずに本会議に直接上程される「特権決議」と位置付けられており、全議員が軍事介入の是非について賛否を明らかにする必要がある。これにより行政府に大きな政治的圧力がかかり、軍事行動の中止や拡大防止につながる効果があるとみられている。
議会側がこうした強い動きを見せている背景には、最近浮上した「2回目の攻撃」をめぐる論争があるとされる。
9月2日、米軍がカリブ海で麻薬密輸の疑いがある船舶を攻撃した際、最初の攻撃で生き残った2人の生存者を、2度目の攻撃で射殺した疑いが持ち上がった。
ワシントン・ポスト(WP)は、ピート・ヘグセス国防長官が1回目の攻撃で生存した者は全員殺害するよう口頭で指示し、現場指揮官のフランク・ブラッドリー海軍提督がこれを実行したと報じた。戦闘能力を失った敵への攻撃を禁じたジュネーブ条約などの国際法に反する「戦争犯罪」に当たるとの批判が出ている。
ホワイトハウスは、2度目の攻撃命令はヘグセス長官ではなくブラッドリー提督が出したものだと説明し、長官の関与を否定した。
この問題をきっかけに、これまでトランプ大統領の対ベネズエラ強硬策をおおむね支持してきた共和党内にも亀裂が生じている。共和党が主導する上下両院の軍事委員会は、異例の合同調査に乗り出し、経緯の検証を進めている。
マイク・ラウンズ上院議員(共和、サウスダコタ州)は「海に取り残された生存者を射殺したのであれば重大な問題だ」と述べ、公然と懸念を示した。
与党内からも批判が強まるなか、これまで共和党の反対でたびたび頓挫してきた戦争権限決議が、今回は可決される可能性も取り沙汰されている。
トランプ大統領は同日、ホワイトハウスでの閣議の席上、ベネズエラを標的とした地上軍事作戦に改めて言及し、「陸上で作戦を行う方がはるかに簡単だ。我々は彼らの移動経路や居場所をすべて把握している」と語った。













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